中小企業のM&Aの目的とは?
M&Aとは企業の合併や買収を意味します。大企業や資金力のある企業の場合は、事業領域の拡大や業界再編に備えた経営基盤の強化といった目的でM&Aを行うケースが多いでしょう。
中小企業の場合は、後継者不足の問題解決、廃業の回避、事業の将来性に対する不安の払拭などが、M&Aの主な目的です。大企業や資金力のある企業と比較すると、事業の拡大といったプラスの意味合いよりも、マイナス面を補うためにM&Aを行うことが多い傾向にあります。
平成29年10月に経済産業省が発表したデータによると、「今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定」というのが実情です。
今後の日本では高齢化に伴い、後継者不足を理由としてM&Aを検討する企業が増えていくでしょう。早めに対策を考えておくことが大切です。
(参考: 『中小企業・小規模事業者の生産性向上について』)
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中小企業がM&Aを行うメリット
M&Aというと、乗っ取りや身売りといったあまりよいイメージを持たない人もいるかもしれません。しかし、中小企業がM&Aを行う主なメリットとして、「事業の成長に期待できる」、「従業員の雇用を維持できる」、「経営の引継ぎに携われる」の3つが挙げられます。
メリットを知ると、これまでに知らなかったM&Aの可能性に気づき、前向きにM&Aを検討するきっかけとなるかもしれません。以下では、この3つのメリットについて詳しく解説していきます。
事業の成長に期待できる
M&Aを行うことで、事業のさらなる拡大、成長が期待できます。様々なノウハウを持った企業に事業を譲渡することでシナジー効果が生まれたり、大規模な資本や人材などを背景として自社で行っていたとき以上に成果を上げられる可能性もあるでしょう。
また、資金繰りが厳しければ、事業売却によって資金を調達することで、財務状況を改善できます。資金繰りの回復により、効果的な投資活動ができ、事業をより早いスピードで成長させやすくなるでしょう。
従業員の雇用を維持できる
会社の経営状況の悪化や後継者不足の問題により、従業員の職が失われることは避けたいものです。企業にとっても好ましいことではありませんし、従業員によってはその後の就業先が見つからず、人生が思いもよらぬ方向に進んでしまうかもしれません。
しかし、経営業況が安定している企業に会社を譲渡したり、今後の成長が見込める企業に事業を売却して資金繰りを改善したりすれば、従業員の雇用を失わずに済むこともあります。M&Aによって安心して働ける環境を維持でき、従業員の家族にも安心を与えられるでしょう。
経営の引継ぎに携われる
M&Aによって会社を譲渡したとしても、役職員として譲渡先企業に残るという選択ができるケースもあります。これまで育んできた事業の経営の引継ぎに携わり、その後の成長を見られることも多いでしょう。
M&Aを行ったからといって、必ずしも今の事業や会社との関わりを断つ必要はありません。このようにM&Aは、愛着のある事業や、大切な従業員を守るためのポジティブな選択肢のひとつといえます。
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中小企業のM&Aの成功事例
M&Aの目的やメリットについてご紹介しましたが、事例がないとイメージが湧かない人も多いでしょう。ここからは、M&Aの成功事例を3つ取り上げてご紹介します。
M&Aを検討中の方はぜひ参考にして、自社ではどのように活用できそうかイメージしてみましょう。後継者問題を解消した事例、事業シナジーを生み出した事例、経営再建ができた事例をそれぞれご紹介します。
後継者問題を解消した事例
食品メーカーである牧田食品(仮)は、地域の食品販売業を営む加藤商事(仮)を買収しました。加藤商事は、1970年に会社を設立し、長らく信頼と実績を積み上げてきた会社です。しかし当時、身内に後継者がおらず、廃業のリスクが発生していました。
そこでM&Aを決意し、牧田食品に会社を譲渡しました。すでに1,000社以上の顧客を抱え、300社以上の仕入先があり、廃業するとほかの企業にも大きな影響を与える可能性が高かったからです。後継者問題を解消するためにM&Aを選択し、廃業の危機を乗り越えた好事例といえます。
事業シナジーを生み出した事例
事業のシナジーを生み出すためにM&Aを行い成功した事例があります。和菓子製造を行う株式会社あわ家惣兵衛が、21LADYの子会社である洋菓子ヒロタに全株式を譲渡し、ブランド力の強化を図った事例です。
株式会社あわ家惣兵衛は、競合がひしめく業界のなかで生き残るためにM&Aを選択しました。ブランド力の向上だけでなく、生産性の向上や人材の補強といった面でも相乗効果を狙った事例です。
経営再建ができた事例
スカイマーク株式会社は、格安航空事業(LCC)に早くから参入していた企業ですが、当時は経営状況が悪化し、民事再生手続きを行うに至りました。そこで、経営再建のためにスポンサーとして投資ファンドのインテグラルやANAホールディングス等とのM&Aに合意し、見事再建を果たした好事例です。
悪化した経営を改善するための適切な対処ができずに、従業員を解雇せざるを得ない状況になる企業もあります。そのまま廃業に至るケースも多いですが、スカイマークはM&Aによって経営を回復し、廃業を免れました。
中小企業のM&Aの失敗事例
M&Aにより成功した事例もあれば、失敗した事例もあります。M&Aを行えば必ずうまくいくというわけではありません。失敗事例を事前に把握した上で、失敗しないためにどのような戦略が必要なのか検討しましょう。
以下では、簿外債務で印象を下げてしまう事例、従業員の反発を引き起こす事例、M&A後の見通しが甘い事例をご紹介します。
簿外債務で印象を下げてしまう事例
中小企業は大手企業と比較すると簿外債務が生まれやすいことが特徴です。重大な簿外債務があると、M&Aを行う際に、買い手企業からの印象が下がる可能性があります。多くの中小企業は税務ベースで決算書を作成するため、会計上の引当金等が計上されていないケースがほとんどです。このレベル感であれば特段問題視されることは少ないのですが、そうではない重大な簿外債務が発見されると、リスク管理能力が低いと判断されることがあるからです。
このような簿外債務があると、経営者自身の信用も大きく下げる要因となりかねません。特に、簿外債務の存在を知りつつ、隠していたとなると、信頼を一気に失うことになります。経理の未熟さが経営悪化の真因であることも考えられるため、厳密に確認しておきましょう。
従業員の反発を引き起こす事例
売り手企業の従業員が反発する事例もあります。買い手企業のイメージが悪かったり、従業員の愛社精神が強かったりすると、M&Aに反発されるかもしれません。
とはいえ、従業員全員の納得を得ることには難しさもあります。経営者の目線から見えていることと、従業員の目線から見えていることは違うことが多いからです。会社の存続を考えると、従業員の賛成がなくても、話を進めなければならないケースもあるでしょう。
M&Aを行う前に情報共有を行うと、反発されて話を進めづらくなる可能性もあるため、事後に伝えるという手段も検討してみましょう。従業員の納得を得られるように話をする準備をして、M&Aを行う理由やメリットを丁寧に説明することも大切です。
M&A後の見通しが甘い事例
M&Aを行ったあとの見通しが甘いと、目的を達成できずに失敗するかもしれません。M&Aを行う前は、M&A成立後に得られるものが大きく見えるものです。しかし、実際にM&Aを行ってみると、想像からは遠い結果になるケースもあります。
状況によっては、企業同士でトラブルが発生したり、以前よりも関係性が悪化してしまったりといった状況に陥る可能性もあるものです。
途中で作業が滞ることもありますし、経営統合のための手続きに時間をかけてしまい、本業に影響が出るおそれもあります。事前に綿密な計画を立てたうえで、手続きを進めていきましょう。
中小企業のM&Aの注意点
初めてM&Aをする場合は何に注意したらよいのか分からず、なんとなく失敗を恐れる人もいるかもしれません。
そこで、M&Aで失敗する可能性を下げるために、注意しておくべきポイントをまとめました。M&Aの目的を明確にする、人材流出リスクに対処するという2点について、以下で詳しく解説します。
M&Aの目的を明確にする
何のためにM&Aを行うのかを明確にしていないと失敗する可能性が高くなります。後継者不足の問題を解消するためなのか、廃業を避けるためなのか、事業の将来に対する不安を払拭するためなのか、まずは目的を明確にしましょう。
ゴールがきちんと設定されていないと、譲渡先企業の選定や条件設定が適切に行えません。大切な会社や事業を譲渡したあとで、経営状況が悪化してしまうのは避けたいものです。
M&Aは、準備や手続きに手間がかかるものです。労力が無駄にならないように、目的を明確にしたうえで、トラブルが起きないように計画的に手続きを進める必要があります。
人材流出リスクに対処する
M&Aを行うときは、人材流出のリスクがあることを把握しておきましょう。M&Aを行うと、従業員の所属する会社が変わるケースがあります。愛社精神が強い従業員の場合、所属する会社が変わるのであれば、他社に転職しようと考える人も出てくるでしょう。
また、譲り受け企業が気に入らない従業員も同様に他社に転職したり、自ら会社を立ち上げようとしたりするかもしれません。
従業員がほかの会社に行くタイミングとして、M&Aの時期はよくも悪くも活用しやすいものです。しかし、会社にとって、人材が流出してしまうことは痛手です。従業員のモチベーション管理を徹底し、人材流出を防ぎましょう。
中小企業のM&Aに成功するためのポイント
中小企業のM&Aを成功に導くためには、いくつかポイントがあります。以下で、円滑にM&Aを進める、適正売却価格を把握する、アピールポイントを考えておく、M&Aの専門家に相談する、の4点について詳しく見ていきましょう。
円滑にM&Aを進める
手続きを円滑に進めていくことは、成功のポイントのひとつです。M&Aはもたついていると話が破断してしまう可能性が高くなります。魅力的なチャンスが訪れたとしても、スピード感を持って対応しないと、話が思うように進みません。そうこうしている間に、さらに経営状況が悪化するリスクもあるでしょう。
M&Aを成功させるためには円滑な交渉が不可欠です。ただ、早く進めようとするあまり、戦略や目的が曖昧なまま、無理に話をつけてしまう失敗もありえます。しっかりと戦略を立てたうえで、スピード感を持ちつつ丁寧に進めるように意識しましょう。
適正売却価格を把握する
M&Aを成功させるには、自社の適正売却価格を把握することも必要です。適正な価格を知らないと、目的を達するどころか、多大な損失を被ってしまうこともあるでしょう。
適正な売却価格は、会社の時価純資産に数年分の営業利益を足した合計額によって、大まかに知ることができます。ただ、こうして算出した売却価格はあくまで目安です。厳密な価格を確認するためには、M&A仲介会社といった専門家に依頼して算出してもらったほうが安心でしょう。
アピールポイントを考えておく
M&Aを成功させるためには、自社のアピールポイントを考えておくのも効果的です。買い手となる企業は、M&Aによって自社にどのようなメリットがあるのか、どのようなシナジー効果が発揮されるのかをチェックします。
シナジー効果を見込めそうな企業だと判断してもらいやすくするためには、自社のメリットや魅力を整理することが重要です。
改めて自社の強みは何か、どういった企業と統合をすれば、さらなるシナジー効果が見込めるのかを考えたうえで、M&Aの手続きを進めていきましょう。
M&Aの専門家に相談をする
M&Aを検討しているなら、まずは専門家に相談することも大切です。M&Aを成功させるための最も重要なポイントといっても過言ではありません。
専門家を通さずにM&Aを行う企業も見受けられますが、失敗に至るケースも多いようです。十分な知識と経験をもとに計画を立てないと、円滑に話が進まなかったり、M&A後に期待したシナジーが得られなかったりして、失敗してしまう可能性が高くなります。中小企業M&Aの専門家に依頼して、スピーディーに効果的なM&Aを行いましょう。
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M&Aを効率的に成功させたい方は専門家の意見を取り入れると安心です。株式会社M&A DXには、大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士や税理士などが多数在籍しています。
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まとめ
中小企業のM&Aについて成功するためのポイントを、事例を踏まえつつご紹介してきました。今回ご紹介したポイントをもとに、M&Aを検討してみましょう。
M&Aで失敗しないためには、専門家の意見も取り入れることが大切です。株式会社M&A DXでは金融系の専門家が多数おり、安心して効率的にM&Aを進めていけます。業歴の長いプロフェッショナルが、安心・安全にサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。