新型コロナによって廃業増加が予想される
新型コロナ感染拡大による企業への甚大なる被害が度々メディアでも取り上げられていますが、実際にはどのような状況にあるのでしょうか。
東京商工リサーチによる廃業情報
東京商工リサーチの調査によると、次のような結果が出ています。なお、この数値は、6,638社(大企業1,087社、中小企業5,551社)からの回答を集計したものです。
「コロナ禍の終息が長引いた場合、廃業(すべての事業を閉鎖)を検討する可能性はありますか?」という質問に対する回答は次のとおりです。
・ある:6.6%(6,638社中、438社)
・ない:93.4%(6,638社中、6,200社)
規模別でみると、大企業で「ある」と回答した企業は0.8%(1,087社中、9社)にとどまったのに対し、中小企業では7.7%(5,551社中、429社)で、9倍以上の開きがありました。
また、上記で「廃業」を検討する可能性が「ある」と回答した企業のうち、「廃業は、いつ頃検討しますか?」との質問に対する回答は次のとおりです(あると回答した438社のうち、436社から回答を得ました)。
・半年以内:16.3%
・1年以内:45.0%
この数値からも、新型コロナの感染が終息しない場合、中小企業においては廃業せざるを得ない企業が増加するものと推察されます。
※参考:東京商工リサーチ「廃業に関するアンケート調査(速報)」
廃業とは。休業と倒産との違いについて
そもそも廃業とは、どのような状態のことを指すのでしょうか。また、廃業とよく混同されるものに休業と倒産がありますが、廃業とどのように違うのかを次に説明します。
廃業とは
廃業とは、東京商工リサーチの定義では、「企業が事業を停止し、以降も再開をしないこと。債務を整理し任意で事業を休止することを指す」とされております。狭義の意味では企業が事業を廃止すること、広義では、事業を廃止した後、企業の解散及び清算することまでを指します。企業そのものがなくなるため、それまで築いてきた技術や経営ノウハウ、取引先との関係、社会的な信用などすべてが消失します。
廃業を選択するさまざまな理由
廃業を選択する理由としては、次のようなことが挙げられます。
・後継者がいない
・業績が良くない
・資金不足のため事業継続ができない
・会社やその事業分野の将来性がない
・最初から事業承継する予定がなかった
・従業員が確保できない
・特殊な技能の引継ぎが困難
企業が廃業を選択する理由はさまざまですが、昨今は「後継者がいない」という後継者不足が大きな問題となっています。
廃業と休業との違いとは
休業とは、「企業が事業を一時的に休止すること」とされております。いずれ事業再開を前提としますが、場合によってはそのまま廃業になるケースもあります。税務署・労働基準監督署・社会保険事務所などに休業届を提出した上で、営業実態がなければ、法人税・住民税・事業税もかかりません。企業としては存続しているため、企業そのものがなくなる場合が多い廃業とは異なります。経営者の病気などで一時的に事業を休みたいといった場合に活用できるでしょう。再開する場合は、税務署や自治体への届出が必要となります。
廃業と倒産との違いとは
倒産とは、企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指します。「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大別され、「法的倒産」では再建型の「会社更生」と「民事再生」、清算型の「破産」と「特別清算」に4分類されます。「私的倒産」は、「銀行取引停止」と「内整理」に分けられます。
廃業手続きと関連する書類について
ここでは、廃業の手続きや提出書類などについて詳しく説明します。
法人では「解散」と「清算」の手続きが必要
法人は事業を廃止した後「解散」と「清算」の2ステップに移ります。解散とは、あらゆる事業活動をを終了して清算業務のみ行う清算法人に移行する手続きのことで、清算とは、会社が解散したあと、それまでに発生した債権債務などを整理する手続きをいいます。
法人の場合の廃業から清算までの手続きについて、次項で詳しく説明しましょう
法人における廃業手続きの流れ
法人の廃業手続きは、次のとおりです。
(1)事業を終了する
事業を終了する日を決め、従業員や取引先へ終了日を伝え、事業を終了させます。
(2)株主総会で解散決議をし、清算人を選任する
株主総会で解散決議を行い、承認されると解散です。その際に清算業務を行う清算人を選出しますが、ほとんどの場合、代表者が清算人となります。清算人は、会社名義の動産や不動産などを解約または売却して、清算業務を進めなければなりません。
(3)解散登記・清算人選任登記
法務局で解散登記の手続きを行い、また税務署にも解散の届出を提出します。
(4)債権者に通知・官報広告
官報により解散したことを公告し、異議がある場合は申し出るよう広く通知します。この公告期間は2ヶ月以上設けなければなりません。
(5)決算承認と解散確定申告
法人の廃業では、解散時と清算結了時の2回、決算書類を作成する必要があります。解散時には、会社法上、決算書類のうち財産目録及び貸借対照表について、株主総会の承認を受けることが必要となります。解散日から2か月以内に、解散事業年度(事業年度開始日から解散日まで)の確定申告を行います。
(6)債務の弁済および債権の取り立て
清算人は、債権申出の公告期間が終了した後に、会社の設備などを換金して債権者に債務を弁済します。
(7)残余財産の確定・分配
清算人は、売掛金や貸付金などの会社の債権を回収し、買掛金や借入金などの未払いの債務を支払います。残余財産が確定すれば、清算人は株主に分配し、清算します。
(8)決算報告書の作成と承認
清算事務終了後遅滞なく決算報告書を作成し、株主総会を開催して清算事務報告の承認を得ます。
(9)清算結了の登記
株主総会で清算事務報告の承認を受けた後2週間以内に、法務局で清算結了の登記申請を行い、会社の登記簿を閉鎖します。
(10)清算確定申告を行う
残余財産確定後1ヶ月以内に、清算確定申告を行います。
(11)清算結了届
税務署及び自治体に清算結了の届出を行って、会社廃業の手続は全て終了となります。
基本的な廃業手続きはこのとおりですが、ほかにも社会保険や雇用保険などの手続きも必要なため、通常2ヶ月から長い場合だと数年単位の期間を要します。
届出書類の提出先と提出時期
法人の廃業であれば届出書類も多くまた提出期限も決まっているため、漏れのないように手続きを進める必要があります。
個人事業主の廃業手続きの流れ
個人事業主の廃業手続きは法人と比べるとかなり容易で、税務署と都道府県事務所へ届出をすれば完了です。
税務署へ廃業届などの書類を提出
税務署へ提出する書類は次のとおりです。
・個人事業の開業・廃業等届出書
・事業廃止届出書(前々年の売上が1,000万円を超えている場合)
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・所得税の青色申告の取りやめ届出書(青色申告をやめる場合)
・所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書を提出
都道府県税事務所へ届出
都道府県税事務所や市町村役場へも廃業届を提出しますが、自治体により様式や期限も異なるため注意が必要です。
廃業を決意する前にM&Aをしませんか
業績が良くない、また後継者がいないからと安易に廃業を選ぶより、ひとつの解決策としてM&Aを検討することをおすすめします。
廃業の場合、計画的に事業をたたむとはいえ、従業員や取引先に及ぼす影響は計り知れません。M&Aであれば、従業員や取引先を守ることにつながり、また経営者も十分な老後資金を手にすることができるでしょう。
M&Aでは、想像もしていなかったような異業種からのオファーがあるなど、さまざまなチャンスがあります。顧問弁護士やM&Aの仲介業者へ早めに相談することで、M&Aが成功する可能性が高まるでしょう。
まとめ
後継者不足や経営者の高齢化、さらに追い打ちをかけるような新型コロナの感染拡大により、今後、廃業は増加することが予想されます。
廃業となると、それまで培ってきた社会的信用や技術、ノウハウ、従業員の雇用、取引先との関係などすべてがゼロとなってしまいます。廃業ではなくM&Aを活用することで、これらを存続させることが可能です。
事業が安定している企業はM&Aが成功するケースが多いので、早めにM&Aの専門家へ相談することをおすすめします。
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