事業承継ガイドラインとは一体?
平成17年、中小企業庁は中小企業関係団体などをベースに「事業承継協議会」を設立したことから始まります。中小企業の事業承継の円滑化に向けた総合的な検討を行い、平成18年6月に中小企業の円滑な事業承継のための手引きである「事業承継ガイドライン」が策定・公表されました。
事業承継ガイドラインが発表された目的は、事業承継の円滑化により中小企業の技術・ノウハウを受け継ぎ、世代交代を通じた活性化の促進をするためです。
60歳を着手の目安とする、事業承継に向けた早期・計画的な取り組みの促進として事業承継に向けた5ステップや、取り組みの促進ツール(事業承継診断)の導入、取り組みの促進体制として地域における事業承継支援体制の強化を行っています。
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事業承継ガイドライン20問20答とは?
平成18年6月に中小企業の円滑な事業承継のために「事業承継ガイドライン」が策定・公表されました。同年10月に中小企業庁は「事業承継ガイドライン」の内容について、中小企業経営者の方々が理解を深めることを目的に「事業承継ガイドライン20問20答」という小冊子を完成させたといいます。
自社の現状に即した事業承継対策をはじめとしてさまざまな事業承継の対策を学ぶことを目的に、円滑な事業承継の実現のために「事業承継ガイドライン20問20答」の作成を行ったのです。
事業承継ガイドライン20問20答は、問答形式にすることで中小企業の経営者の理解を深め、事業承継についてわかりやすく学ぶことができる構成になっています。
事業承継ガイドラインが策定された理由
中小企業・小規模事業者は雇用の担い手です。また、多様な技術・技能の担い手でもあり、日本経済・社会には欠かすことができない重要な役割を担っています。円滑な事業承継をすることにより、事業価値を次世代へ引継ぎ、事業活動の活性化を実現することが不可欠です。
しかし、事業承継の準備が不十分だったために円滑な事業承継ができず、休廃業・解散をしてしまった中小企業は多くあります。また、事業承継は家族内の問題という古い考えから専門家の相談を受けるという考えもなく、一人悩む中小企業経営者も多くいるといいます。
多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしている今、中小企業の円滑な事業承継をはかるため、事業承継ガイドラインを作ったのです。
事業承継対策が必要な理由は?
日本経済を支えている中小企業・小規模事業者では、近年経営者の高齢化が進んでいます。一方で、後継者の確保が困難になっています。事業承継に失敗したことを原因に社内で紛争が生じてしまったり、会社の業績が悪化してしまったりするケースもあるのです。
最悪の場合、黒字であるのに廃業するケースも出てきています。現在、年間で黒字廃業は7万件あるといわれています。日本にとって事業承継は非常に重要な問題です。
計画的な事業承継対策をした場合、後継者の経営もスムーズに進むでしょう。また事業はより発展する可能性があり、従業員の雇用も確保できます。しかし、事業承継対策は面倒だから、自分はまだまだ元気だからと先送りにしているケースが多くあるようです。
そのため、事業承継ガイドラインなどを作成し事業承継を進めるのが大事なのです。
事業承継計画の作成方法
事業承継計画の作成方法ですが、まずは事業承継にかかわる関係者の状況の洗い出しから始めます。経営者や経営者の家族、そのほかの関係者など、事業承継に関係する人物の洗い出しを行う際、安心して事業承継をすることができるのか見極めましょう。
次に、事業承継にかかわる現状認識を行います。たとえば、経営者自身の個人資産の状況や会社の経営資源やリスクの状況など、事業承継にかかわる現状を洗い出すことが重要です。
現状認識の策定が終了した後に、後継者候補に関する状況をまとめていきましょう。また、相続発生時に予想される問題も書き出してみます。経営理念の明確化や事業の中長期目標の設定もしておくとよいでしょう。
上記の情報整理が終わったら、本格的に事業承継計画書を作成します。
ガイドラインに沿った事業承継の進め方
この章では、事業承継のガイドラインに沿った事業承継の進め方について、具体的な方法4点を紹介していきます。最終的な事業承継の手段はM&Aとなりますが、次の章に親族内、親族外承継をする場合の方法も記載しています。
ガイドラインに沿った事業承継のすすめ方とはどのようなものだろうとお考えの方は、ぜひともご覧ください。
1. 事業承継に向けた準備の必要性を考える
中小企業は、日本では企業数の約99%、従業員の数は約70%を占めています。日本の地方では、中小企業は雇用の受け皿となっているのです。事業承継の対策が不十分であれば、日本の産業基盤は崩れてしまうでしょう。
中小企業の事業承継の現状として、親族に後継者がいないために親族外承継やM&Aを利用した第三者への事業承継が増加しているのです。M&Aを含む親族外承継の数は、現在約65%以上にもなっています。親族外への事業承継の問題として、会社(事業)の譲渡先の選定、後継者の育成に時間がかかるといえるでしょう。
そのため、事業承継ガイドラインでは60歳から事業承継のために動き出すべきだとしています。事業承継のきっかけとして、「事業承継診断」を活用するとよいでしょう。
2. 経済状況や経営課題を把握する
経営状況や経営課題、経営資源などを見える化し、現状を正確に把握することから始めましょう。把握した自社の経営状況・経営課題などをもとにして現在の事業からどれくらい持続し成長するのか、商品力や開発力はどのようになっているのか、利益を確保する仕組みはどのようになっているのかなど、再度見直して自社の強みを把握することが必要です。
経営状況の把握は経営者自ら取り組むことも可能ですが、専門家や金融機関に協力を求めたほうが効率的に進むでしょう。
経営状況の把握の際には、自社を取り巻く環境の変化やそれにともなう経営リスクなどもあわせて把握する必要があります。また、経営資源には貸借対象表に計上された資産のみならず、のれんなど目に見えない資産についても考えるようにしましょう。
3. 事業承継に向けた経営改善をする
事業承継は経営者の交代を機に飛躍的に事業を発展させる好機です。経営者は後継者へバトンを渡すまで、事業の発展・維持に努めて続けなければなりません。
事業継承のために経営改善(磨き上げ)を行い、後継者が継ぎたいと思うような会社作りをしていく必要があります。具体的には、経費削減や業績改善のみではなくのれんの価値向上や優良な顧客の確保、優秀な人材、知的財産権や経営上のノウハウ、法令順守体制、金融機関との関係改善、株主との良好な関係構築などがあります。知的財産が強みということも多くなるでしょう。
磨き上げは対応が多岐にわたりますので、効率的に磨き上げを行うためには専門家や金融機関の助言をもらうようにしましょう。
4. M&Aを行う
親族内承継が難しく社内での親族外承継も難しい場合、M&Aを行うことで、既存の会社や親族という枠にとらわれず幅広く後継者を探せます。その場合はM&Aの仲介会社を選定し、売却条件の検討を行うことで事業承継が可能です。
後継者を一から育てることはできませんが、会社を後継者に託すことは可能です。そのためには、信頼できるM&Aの業者選びは非常に重要といえます。そこで、M&A DXの仲介サービスをおすすめします。
M&A DXの仲介サービスなら「製造業」「サービス業」「物流会社」「商社」「外食チェーン」「建設業」「IT企業」等の幅広い業種で事業継承の成立実績を持っています。M&AをM&A DXの仲介サービスと連携させることで会社の磨き上げに専念でき、精神的負担・時間的負担も軽減させられるでしょう。
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親族や従業員に承継する場合の進め方
前章の「ガイドラインに沿った事業承継の進め方」の1~3までは一緒ですが、事業承継計画を策定していく必要があります。
まずは自社を知り、そして自社を強くすることが事業承継の準備において重要になります。具体的に事業承継を進めていくにあたり、自社や自社を取り巻く環境を整理した上で、会社の10年後を見据え、いつ、どのように、何を、誰に承継するか具体的な計画を立案しなければなりません。
事業継承計画は、後継者や親族と共同で取引先や従業員、取引金融機関などの関係を念頭において策定し、策定後は関係者と共有しておくことがよいでしょう。
中長期目標を設定し、設定した目標を踏まえて、資産・経営の継承の時期を盛り込んだ事業承継計画を作りましょう。
まとめ
事業継承ガイドラインというものがあります。事業承継は中小企業にとっては待ったなしの問題となっています。60歳になったら事業承継ガイドラインにしたがい、事業承継を進めていくことで事業を進められるほか、従業員の生活を守ることができるでしょう。
事業承継の進め方に不安があったり、わからないことがあったりしたら、お気軽にM&A DXの仲介サービスまでご相談ください。M&A DXの仲介サービスには大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士・税理士・弁護士等が多数在籍しているので、必ず解決に向かってお役に立てるでしょう。