グループ会社・関係会社・関連会社・子会社はどう違う? それぞれの定義をご紹介

税理士 安江一将

会計コンサルティング会社・税理士法人及びベンチャー企業2社に勤務。会計コンサルティング会社・税理士法人では税務顧問・税務申告のほかに、事業承継支援業務、組織再編業務、IPO支援業務、M&A業務を数多く実行。ベンチャー企業では管理部長・経営企画室を歴任し、上場のための体制構築・実行支援を推進する。大手コンサルティング会社名古屋支社副支社長を経て2019年8月に安江一将税理士事務所として開業した後、さらにM&A業務を推進することを目的として株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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中小企業やスタートアップ企業であれば、1社だけで独立して事業を営んでいる会社が多いですが、上場企業をはじめ、ある程度以上の規模になると、複数の企業でグループを形成して、相互に関連しながら事業活動を行っている方が普通になります。

これらの集団において、なんらかの関係を持つ会社を指し示すとき、「グループ会社」「関係会社」「関連会社」「子会社」「親会社」など、さまざまな言葉が用いられます。
これらの言葉には法律で明確な定義が定められているものもあれば、そうではないものもあるので、正確に理解しておかないと混乱を招くことがあります。
本記事では、これらの用語の意味を解説するほか、グループにおける企業会計上の取り扱いなどについて解説します。

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グループ会社、関係会社、関連会社、子会社など、似ている言葉が多い

ある調査によると、有価証券報告書情報(EDINET)に登録されている企業のうち、約85%が企業グループに属しており、また、日本の企業全体に占める、企業グループの売上(収入)割合は70%以上となります。

(出所:「我が国の『企業グループ』の状況について-経済センサス‐基礎調査の集計結果から-」)

実際、上場企業をはじめとした大手企業のホームページを見れば、ほとんどの場合、会社概要などの欄に、「グループ企業」「関係会社」などの情報が記載されています。したがって、会社を理解する上では、グループ会社や関係会社というのは、どのような関係性なのかを押さえておく必要があります。
また、「グループ会社」「関係会社」以外にも、「関連会社」「子会社」などの言葉が用いられることもあり、それらへの理解も必要となります。

関係会社、関連会社、子会社は法令で規定されているが、グループ会社の規定はない

日本において、会社を扱う法律の中心は会社法です。
会社法では、第一編総則、第一章通則の「定義」において、「子会社」「子会社等」「親会社」「親会社等」が、それぞれ定義されています(会社法第2条3号~4号2)。
また、「関係会社」「関連会社」については、会社法の規定に基づく法務省令第十三号「会社計算規則」、および、証券取引法第百九十三条の規定に基づく「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」などで定められています。
一方、グループ会社については、法令での規定がありません。つまりグループ会社という言葉は一般用語なのです。

用語規定されている法令など
子会社、親会社、関連会社、関係会社会社法、会社計算規則、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則など
グループ会社法令での規定なし

以下では、それらの法令も参照しながら、定義や意味を確認していきます。
なお、会社法では「会社」は「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう」と定められていますが、以下では株式会社を前提として話を進めます。

「子会社」の定義とその意味

最初に、子会社から見ていきましょう。会社法では「子会社」は以下のように定義されています。

【会社法】第2条

三 子会社
会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
三の二 子会社等
次のいずれかに該当する者をいう。
イ 子会社
ロ 会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの

株式会社の子会社とは、「親会社となる会社に、株主総会議決権数の過半数(50%超)を保有されている会社」ということになります。逆にいうと、他社の株式のうち議決権数の過半数を保有している会社が「親会社」です。

いうまでもなく、株式会社の最高意志決定機関は株主総会であり、その議決権の過半数を保有していれば、普通決議を単独で可決できるため、親会社は子会社の経営を支配することができます。

なお、議決権の保有割合の計算には、親会社が子会社を通じて間接的に保有する議決権も含まれます。これは、子会社の子会社(孫会社)や、関連会社がある場合です。

また、子会社が親会社に株式を100%保有されている場合は、それぞれを特別に「完全子会社」「完全親会社」と呼ぶこともあります。
株式市場においては、上場企業の完全子会社は上場できないというルールがあるため、完全親子関係であるかどうかは、そのルールとの関係で論点になる場合があります。

「子会社」の定義とその意味

子会社を判定する実質支配力基準

ここで、親会社が「子会社の経営を支配している」かどうかを、議決権の過半数を有しているか否かのみで判定してしまうと、問題が生じることがあります。

代表例として、後述する連結決算をおこなう必要がある会社の場合の“連結外し”があります。
連結外しとは、連結決算の業績を良く見せたいなどの理由により、子会社の株式を売却するなどして、その子会社を恣意的に連結決算の対象から外してしまうことです。
議決権の過半数を有しているか否かという形式的な基準だけで親子関係を判断すると、たとえば、子会社の議決権の51%分を保有している親会社は、そのうち2%分だけを売却すれば、親子関係がなくなり、子会社を連結から外すことができてしまいます。

しかし、もし親会社から送られてきた人物が子会社の社長をしている、といった状況であれば、仮に議決権割合が49%になったところで、経営支配の実態はまったく変わらないと推察されます。
そこで、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」や企業会計基準などでは、「支配力基準」あるいは「実質支配力基準」と呼ばれる基準を採用しています。
これは株主総会議決権割合だけではなく、たとえば、上で述べたような「親会社の社員が子会社の代表取締役についている」といった、経営に実質的に影響を与える要素も加味して、親子関係にあるかどうかを判断する基準です。
支配力基準の詳細な内容は、ここでは割愛しますが、必ずしも議決権割合だけで、子会社を決めているわけではない、という点は押さえておきましょう。

子会社等とは

上記、会社法第2条の「三の二 子会社等」は、平成26年の改正会社法で加えられた規定で、「等」には、会社以外の社団法人や個人などが含まれます。

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「関連会社」は、子会社よりもやや緩い結びつきを持つ

次に「関連会社」です。これは、法令上は以下のように定義されています。

【会社計算規則】第2条3項

二十一 関連会社
会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く。)をいう。

【財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則】第8条

5 この規則において「関連会社」とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいう。

上記の定義をわかりやすくいいかえると、「子会社のように、他社から完全に経営を“支配”されているわけではないが、経営上の重大な“影響”は受けている会社」が関連会社ということです。ざっくりいって、子会社よりもやや緩い結びつきの会社だといえるでしょう。

関連会社と認められるための基本的な定義は「他社が株主総会議決権の20%以上を有する会社(子会社を除く)」であると、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」などで定められています。
ただし、子会社の場合と同様に、実質支配力基準も適用されるので、20%未満であっても関連会社とされる場合もあります。

なお、関連会社の場合、親子関係の定義からは外れるため(子会社ではないため)、出資している会社は、厳密には正確には「親会社」ではなく「投資会社」「出資会社」などと呼ぶべきです。ただし、一般的には「親会社」と表現しても差し支えありません。

「関連会社」は、子会社よりもやや緩い結びつきを持つ

「関係会社」は、法的に規定されたグループ概念

「関係会社」について、「会社計算規則」の定義を見てみましょう。

【会社計算規則】 第2条3項

二十五 関係会社
当該株式会社の親会社、子会社及び関連会社並びに当該株式会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいう。

(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(第8条8項))にも同様の定義がありますが、ほぼ同じ内容なので割愛します)。

上の条文はやや読みにくいですが、仮に対象となる会社を「A社」とすると、

・A社の親会社
・A社の子会社
・A社の関連会社
・A社に出資している投資会社(A社は投資会社から見た関連会社)

以上をすべてをひっくるめて、「関係会社」と呼ぶということです。つまり、親会社や子会社、関連会社などを含めた包括的な意味合いの定義となっています。

「関係会社」は、法的に規定されたグループ概念

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「グループ会社」は、法的な規定のない一般用語

「グループ会社」は、会社法などの法律では明確に定義されていない、一般用語(日常語)です。
そのため、人によって、あるいは話の文脈によって、使われている意味が微妙に異なる場合があります。しかし一般的には、何らかの資本関係がある会社を広く指す言葉だといえるでしょう。その意味で、上記の「関係会社」とほぼ近い意味で使われている場合が多いでしょう。
参考までに、上記の「「我が国の『企業グループ』の状況について」では、「企業グループ」は以下のように定義されています。

トップの親会社(親会社がなく、子会社がある会社企業)と、その子会社や孫会社を順次合わせたツリー状の企業群をいう。

子会社・関連会社の株式についての会計処理

親会社が保有する子会社、関連会社の株式について、親会社“単体”の決算書上でどのような会計処理がおこなわれるのかを確認します。

子会社・関連会社の株式は取得原価のまま計上される

親会社の決算書上、子会社や関連会社の株式は、「関係会社株式」という科目名で、貸借対照表の固定資産の中にある「投資その他の資産」という区分内に計上されるのが原則です。(中小企業では「子会社株式」などの科目名が付されていることもあります)。
たとえば、他社の株式を5,000万円で買い取って子会社化した場合には、以下のような会計処理が行われます(単位:万円)。

関係会社株式 5,000(※)  /  現金預金 5,000 
(※)貸借対照表の「投資その他の資産」に計上

この関係会社株式の金額は、この後で説明する株式の減損処理をおこなう場合を除き、取得原価(5,000万円)のまま据え置かれます。
企業会計のルール上、上場企業の株式は、決算にあたって時価評価が求められるのが原則です。ただし、関係会社株式に該当する場合には、非上場企業の場合はもちろん。仮に上場企業の株式であっても時価評価はせず、取得原価で据え置きます。

業績が著しく悪化した子会社・関連会社の株式は、減損処理を迫られる

関係会社株式の原則的な会計処理は上記のとおりですが、子会社や関連会社の業績が著しく悪化し、債務超過に陥るなどして、その株式の実質的な価値が大きく下落した場合には、例外的に「減損処理」が必要となります。
減損処理とは、貸借対照表に計上されている固定資産などの収益性が低下し、その投資額を回収する見込みがなくなったと認識された時点で、評価損を計上して帳簿価額を減額する会計処理です。

たとえば、上記で取得した関係会社株式(取得原価:5,000万円)について、期末における実質価額が2,000万円と評価され、減損処理が必要となった場合の親会社の会計処理は次のようになります(単位:万円)。

関係会社株式評価損 3,000  /  関係会社株式 3,000(※)
(※)実質価額まで株式の価値を切り下げる

なお、どれくらい価値が下がったら減損処理をすべきなのかの判定や減損処理すべき金額については会計基準において細かい規定がありますが、専門的な内容になるのでここでは割愛します。

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子会社や関連会社の業績が親会社の連結決算に与える影響

最後に、連結決算をおこなっている場合に、子会社や関連会社の業績が親会社の連結決算に与える影響について、簡単に説明します。

連結決算とは?なぜ必要とされているのか?

連結決算とは、グループ会社を1つの会社とみなして連結決算書(「連結財務諸表」)を作成することです。
連結決算が行われていなければ、たとえば、グループ内取引によって、親会社の売上を水増ししたり、親会社から子会社に損失を飛ばしたりして、親会社の決算書だけを“化粧”してよく見せることも簡単にできます。
しかし、連結決算ではそういったことは不可能になり、企業グループ全体としての正しい業績、財務の実態を把握することができます。
連結財務諸表の作成が法的に義務付けられているのは、有価証券報告書の作成義務のある上場企業などですが、近年は中小企業においても、独自または金融機関の要請等により作成することが多くなっています。

子会社の決算書は親会社の決算書にすべて取り込まれる

連結財務諸表の作成手順の概略は、以下のとおりです。

①グループ内の親会社・子会社の貸借対照表や損益計算書を作成する
②それらを単純に合算する
③そこからグループ内部の取引を消去するなど、一定の修正(連結修正仕訳)をおこなう。

ただし、子会社であっても、売上規模があまりにも小さいなど、連結決算に含める重要性が乏しいと考えられる場合には、連結対象から除かれることがあります。連結対象に含まれる子会社のことを「連結子会社」、含まれない子会社を「非連結子会社」と呼びます。

関連会社には持分法が適用される

上記の連結決算の説明には、関連会社は含まれていませんでした。では、関連会社は親会社(投資会社)の連結決算に何も影響を与えないのかというと、そうではありません。

関連会社は「持分法」という方法により、関連会社の利益の一部(出資割合分)が親会社の連結決算に取り込まれていくことになります。このため、会計上、持分法が適用される関連会社のことを「持分法適用会社」と呼びます。

なお、子会社の場合と同様に、関連会社であっても重要性が乏しい場合には、持分法適用会社とならないことがあります。また、持分法適用会社には、子会社のうち非連結子会社となった会社も原則として含まれることになります。

▼連結子会社と持分法適用会社
連結子会社と持分法適用会社

関連会社及びその他の関係会社の判定の設例

(1)A社はB社の議決権の議決権22%を所有している。
→B社はA社の関連会社となります。

(2)B社はA社の議決権の17%を所有、また、B社はA社との間に重要な販売仕入れ等の取引がある。
→B社はA社のその他の関係会社となります。

(3)A社はB社の議決権の13%を所有している。
→B社はA社の関連会社には該当しません。

(4)A社はB社の議決権の13%を所有、A社の子会社であるC社はB社の議決権の8%を所有し、また、A社の役員がB社の代表取締役に就任。
→B社は当社の関連会社となります。

▼子会社の判定基準

議決権議決権以外の要件判定
50%超子会社
40%以上、50%以下の場合特定の者の議決権とあわせて50%超又は一定の要件子会社
40%未満の場合特定の者の議決権とあわせて50%超かつ一定の要件子会社

▼関連会社の判定基準

議決権議決権以外の要件判定
20%以上関連会社
15%以上、20%未満の場合一定の要件関連会社
15%未満の場合特定の者の議決権とあわせて20%以上かつ一定の要件関連会社

本記事のまとめ

一見混同しがちな、グループ会社・関係会社・関連会社、子会社などの用語ですが、実はそれぞれ意味が異なるものであることを確認してきました。特に、子会社と関連会社はよく似ていますが、法律で明確に定義がなされているので、その違いや、親会社の決算への影響などを正確に理解しておきましょう。

関連記事はこちら「子会社化のメリットとは?デメリット・グループ会社との違いを解説」

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