企業再生とは
企業再生とは、ひと言でいえば経営維持困難な状態に陥っている企業にさまざまな策を施し、再生させることです。再生の手法としては、銀行融資返済のリスケジュールや中小企業再生支援協議会等による私的再生と、会社更生法や民事再生法を適用する法的再生があります。
企業再生と似た言葉で事業再生が使われることもあります。ここでは企業再生の概要を理解するためにその2つの違いを説明します。併せて企業再生の話題でよく出てくるSWOT分析と実抜計画についても触れていきましょう。
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企業再生と事業再生の違い
企業再生とは会社が赤字経営などで倒産状況となった場合に、赤字状態である事業の見直しや不採算事業を切り捨てるなどさまざまな手法を使用して経営状態を回復させることを言います。
一方、事業再生とはターンアラウンドとも呼ばれ、実施している事業の方針を修正したり改革したりすることで今まで以上に収益を上げてその事業を再生することを言います。
どちらも法律用語ではなく、境界があいまいなため同義で使われることもあり、厳密な定義は存在しません。ただし、会社更生や民事再生などの法的再生では、その企業が当事者になるので企業再生と呼ばれるのが一般的です。企業再生が根本的な目的を表現した言葉であるのに対し、その目的のための手段が事業再生とも言えるでしょう。
この2つを、何がなんでも区別する必要はありません。しかしながら経営者にとって大切なことは企業自体の再生ですので、この記事においては企業再生という言葉を使って進めていきます。
SWOT分析と実抜計画
企業再生の話題の中で、SWOT分析および実抜計画という言葉がよく出てきます。まずは、これらの概要を理解しておきましょう。
【SWOT分析】
SWOT分析とは経営目標達成のために、自社の強みになる要因と弱みになる要因、外部要因と内部要因を洗い出し、これらを組み合わせて分析するフレームワークです。
内部のプラス要因が強み=Strength、マイナス要因が弱み=Weaknessで、外部のプラス要因が機会=Opportunity、マイナス要因が脅威=Threatです。SWOT分析はこれらの頭文字を組み合わせてつけられた名称です。
再生計画では根拠のない数字を積み上げても、金融機関からは認めてもらえません。綿密な分析を通じて、収益性の見通しを示すことが必要です。
そのためにSWOT分析を行い、結果をもとに以下のようなクロス分析を行うことで、実現性がある戦略を描くことが出来ます。
Strength 自社にとっての強み | Weakness 自社にとっての弱み | |
Opportunity 機会 | 〇 積極的に展開 | △ スキルアップする前提で展開 |
Threat 脅威 | △ 差別化前提で展開 | ✖️ 縮小か撤退 |
【実抜計画】
実抜計画とは、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画のことを指します。前提としてもっとも重要なのはキャッシュフローによる債務償還能力です。つまり、営業活動から安定してキャッシュの獲得ができている状態にあることです。
その上で、実現可能性を裏付けるためには以下の3つの要件(金融庁による監督指針Ⅲ-4-9-4-3参照)を満たさなければなりません。
● 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
● 計画における債権放棄等の支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
● 計画における売上高、費用及び利益の予測などの想定が十分に厳しいものとなっていること
企業再生に取り組むための要件
企業再生は、どのような状態の企業でも取り組めるわけではありません。法的拘束力はありませんが、客観的に再生の実現性が認められない場合は、企業再生に取り組むことが許されないのです。
企業が再生に取り組むための要件は以下のとおりです。
● 経営者が現役世代であり、再生への強い意志があること
● 営業黒字が見込め、資金繰りも正常化すること
● 事業に需要があること(再生が可能であること)
● 債権者の協力を得られること
これらを個別に解説していきましょう。
経営者の強い意志があること
企業再生の条件の1つ目は、企業を再生するには経営者の強い意志があることです。債権者の協力を得るためにも、また多くの重大な決断をするためにも、経営者の強い意志が欠かせません。
いくら有望な再生計画が構築できたとしても、陣頭指揮を執るべき経営者に計画実現の意志がなければ計画通りに順調に進むことは困難となるでしょう。
黒字化が見込め、資金繰りも正常化すること
企業再生の条件の2つ目は、現状で営業段階の利益が出ていることです。
企業再生とは単なる負債の圧縮ではなく、事業自体の活力を原動力として企業を再生させることです。そのため、いくら債務免除や返済計画の組み直しを行っても、営業による利益が上がらない限りは資金繰りが悪化し、再度資金ショートに陥るのは明らかです。
資金繰りを正常化させるために、人件費その他の経費を見直し、削減できるコストは削減し、営業利益を確保できるようにすることが大前提となります。負債の圧縮とキャッシュフローの正常化が組み合わさってこそ、企業再生の実現が可能となるのです。
事業に需要があること(再生が可能であること)
企業再生の条件の3つ目は、その事業にマーケットからの需要があることです。
いくら債務を圧縮したところで、その事業に市場価値がなければ、黒字化は見込めず再生不可能になるでしょう。マーケットの需要がなければ債権者からの協力も得られにくく、企業再生に取り組むのは非常に困難です。
しかしマーケットから求められる事業を持っている企業であれば継続性があり、社会的な意義もあるので企業再生の可能性が認められます。
債権者の理解を得られること
企業再生の条件の4つ目は、債権者の理解を得られることです。
企業再生を自社のみの力で行うことは、非常に困難です。債権者からの一定の協力がなくては不可能ともいえます。
とりわけ銀行などの最大債権者は、債権額が大きいことから、法的再生にはその同意が不可欠です。私的再生においても債権者の協力なくして、再生が不可能であるのは同じです。
いずれにしても、企業再生に入る段階では債権者の理解を得て、協力をとりつけることから始めなければなりません。
企業再生の手法①「法的再生」
法的再生と法的整理とも呼ばれ、企業再生の手法の中で裁判所の関与のもとに行われる手法を意味します。法的再生にはメリットとデメリットがあります。
また、法的再生の手法としては、以下の2つが代表的なものです。
● 会社更生
● 民事再生
ここでは法的再生のメリットとデメリットをわかりやすく解説した上で、「会社更生」「民事再生」などの手法についても触れていきましょう。
法的再生のメリットとデメリット
まず、法的再生のメリットとして想定できることを挙げてみましょう。
1つ目は、手続きの内容が、法律によって厳格に定められているので明確であるということです。裁判所が関与することなので、関係者間の公平性が担保されています。
2つ目は債務の免除です。手続きを行うことができれば80~90%以上の債務を免除することができる場合もあり、残りの債務についても無利息かつ5年から10年に分割払いとすることが可能な場合もあります。
3つ目は法律上のルールにもとづいて債務の履行を停止することが可能で、債権者の中に反対者がいても、債権額と債権者数によって決まる多数決によって再生に入ることができます。
次に、法的再生のデメリットとして想定できることを挙げてみましょう。
1つ目は、法的再生を行っていることは、信用調査会社が公表する倒産速報によって情報がオープンになることから、企業イメージや信用に多少なりとも傷がつくことが挙げられます。
大口の取引先が不安に感じて取引量を減らされたり停止されたり、仕入れ先からも仕入れを拒まれたりすると、再生に取り組む上での障害となるおそれがあります。
2つ目に、再生の申立てに必要な書類作成や手続きのためには、専門的な知識が必要であり、そのための弁護士費用がかかってくるというコストの面でしょう。また、裁判所においても手続きを行うための費用を納める義務があります。
法的再生の手法
会社更生と民事再生についてそれぞれを見ていきましょう。
【会社更生】
対象が株式会社に限定される方法であり、主に大企業への適用が想定されています。従来では、裁判所が再建を監督する更生管財人を選任するのが基本でした。しかし現在では、要件を満たすことで経営者でも管財人となることが可能です。
次に述べる民事再生との決定的な違いは、担保権を持つ者の権利「別除権」が認められておらず、担保権を再生実行中に行使できないことにあります。
【民事再生】
個人事業あるいは会社の形態を問わずに利用できる再生手法であり、もっともポピュラーな手法です。対象は中小企業を想定していますが、大企業に対して適用されたケースもあります。
裁判所に選任された監督委員が監督することもありますが、基本的には経営陣が経営権を失わずに主体的に再建に取り組めるのが大きな特徴です。
企業再生の手法②「私的再生」
私的再生は私的整理とも呼ばれ、債務者である企業と債権者との話し合いにもとづいて行われます。法的再生とは違って、裁判所の関与はありません。
私的再生には「私的整理ガイドライン」が詳細に設けられています。ここではそのガイドラインの概要および私的再生のメリットやデメリットを解説し、その上で具体的な手法について触れておきましょう。
私的整理ガイドライン
有識者や全国銀行協会などの金融機関により作成された、私的整理=私的再生に関するガイドラインです。私的再生の準則、手続きの細かい方法について定められています。
私的整理に関するガイドライン研究会 (zenginkyo.or.jp)
手続きを遂行するのは主要債権者とされています。そのため、このガイドラインに沿って私的再生をすることは、後述するデメリットを補足できるもので、債権者、とりわけ金融機関の理解を得やすくなると想定されます。
債権回収を禁止するように要請する「一時停止通知」も出されます。ただし、実質的な債務超過を、3年以内を目処に解消する再建計画が必要です。
私的再生のメリットとデメリット
私的再生のメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
まずはメリットですが、裁判所が関与しないために公表されることなく進めていくことができます。もちろん交渉相手の債権者には知られますので、秘密保持契約の締結が必要です。
また、弁護士による書面の作成は必ずしも必要ではなく、裁判所に費用を納める必要もありませんので、法的再生よりもコストは抑え、比較的早く進められることもあります。その他には要件を満たすことで、債権を無税償却することが可能といったメリットもあります。
次にデメリットですが、法律による債務履行の停止などの効力はなく、明確な手続きがありませんので、それぞれの債権者と個別に話し合いをする場合に、公正さについて疑問を持たれるおそれがあります。
また、多数決はありませんので、話し合った上で合意ができない債権者からの協力は得られません。
私的再生の手法
私的再生の具体的な手法としては、以下の4つが挙げられます。
【中小企業再生支援協議会による支援】
「中小企業再生支援協議会」により、前述の私的整理ガイドラインを踏まえた「支援協議会スキーム」に従って行われます。
【企業再生支援機構による支援】
2009年に官民共同出資で設立された認可法人「地域経済活性化機構(REVIC:旧ETIC)」によって行われます。
【企業再生ファンドの活用】
投資家から集めた資金を原資とする「企業再生ファンド」を活用する再生です。
【特定調停スキームの活用】
特定調停スキームは、「金融円滑化法」の終了に伴う対応策の一つとして、日本弁護士連合が中心となり策定したものです。
それぞれの手法を詳しく見ていきましょう。
中小企業再生支援協議会による支援
私的整理ガイドラインをベースにしつつ、中小企業の特性や地域の特性を考慮して策定された「支援協議会スキーム」は、第三者である認定支援機関に支援業務部門が設置されて手続きを遂行します。
主要債権者が監督ではないので、その面では法的再生にニュアンスが近いともいえます。債務超過の解消も5年以内が目処とされているので、私的整理ガイドラインよりも時間軸の面では緩やかです。
地域経済活性化機構(旧:企業再生支援機構)による支援
官民ファンドである地域経済活性化機構(REVIC)とは、2009年に「企業再生支援機構」の名称で設立されて2013年に現在の名称に改名された、官民共同出資の認可法人です。
これまでも、地方の中小企業や中堅企業をメインに大企業も含めた多数の企業再生の実績を持っています。
再生対象の企業に、経営に長けた人材の投入を行い、債務を整理します。政府の保証付きで資金を借り入れて活用し、再生のための投融資や金融機関からの債権買取り、金融機関調整も手がけます。
特定認証ADR手続き
産業競争力強化法にもとづく制度である特定認証ADR手続きは、事業再生実務家協会による紛争解決手続きです。ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判以外の方法による解決を意味します。
この手続きの実施は公表されません。そのため、債権者との取引を穏便に継続できます。上場企業の場合は、上場を維持することが可能です。
つなぎ資金の借入れができることや債務免除に伴った税制上の優遇措置があること、メインバンク以外の金融機関との調整が行いやすいことなどが、主な特徴として挙げられます。
企業再生ファンドの活用
投資家から集めた資金を元手として、金融機関らの債権買取り、再生対象企業への出資などを行うのが民間の企業再生ファンドです。
基本的にはファンドの運用会社から企業再生の専門家を派遣して、不採算事業の売却や資金調達方法の見直し、コスト削減、営業手法の改善などを全方位的に進めることで企業再生を支援します。
その上でIPO(新規株式公開)や株式譲渡などで収益を上げ、投資家に還元するのが企業再生ファンドの仕組みです。
中小企業の再生をメインで手がけるファンドの場合は、中小企業再生支援協議会などと連携を取りつつ、経済的支援を要する中小企業に対して資金提供を行います。
【特定調停】
会社更生や民事再生のような手続きとは違って、あくまで当事者間の話し合いです。法律にもとづいた債務履行の停止はありません。その話し合いの仲介を裁判所が調停委員として務めます。
一般的な調停とは違って、その目的は個人もしくは企業の経済的再生であって、当事者の意向にもとづく柔軟な解決を導くものです。
企業再生の実行に際しての注意点
経営困難に直面した企業が企業再生を実行するにあたって、リストラは欠かせません。とはいえ、安易に「人に対するリストラ」に直結させないことが大切です。
リストラといえば人員整理をイメージしがちですが、本来のリストラは必ずしも人員整理や部門の整理を意味するわけではありません。詳しく見ていきましょう。
業務改善を優先する
最終的な選択肢としてそういう手法もありえますが、まずは「業務に対するリストラ」として、業務効率化を目指して業務プロセスの改善や経費のロスをなくす作業を優先して行いましょう。
業務効率がアップして、同時に無駄な経費を削減すれば確実に生産性は向上します。「人に対するリストラ」を検討するのは、あくまでも「業務に対するリストラ」を実行してもまだ再生の目処が立たない場合の最終手段です。
また、「人に対するリストラ」に着手せざるを得ない状況での注意点は、再生に不可欠な人材を流出させてはならないということです。
何としても残って欲しい優秀な人材が、将来性を考えて自ら退職の道を選んでしまう場合には、再生のための大事なエネルギーを流出することになります。
そうならないように「会社とともに再建の道を歩むことを勧めましょう。
整理解雇に踏み切る条件
整理解雇に踏み切らざるを得ない状況において、実際にそれを行うには以下の4つの条件を満たしていなければなりません。
● 企業の存続と経営の維持を保つためには、どうしても人員整理が必要であること
● 希望退職者を募集するなどの整理解雇を回避する努力をすでに尽くしていること
● 整理解雇対象者の選定に充分な合理性が伴っていること
● 従業員との間で協議が充分に尽くされていること
実際に整理解雇を実行するとなると、一挙に多額の退職金の支払いが発生するため、むしろ財務を圧迫するおそれがあります。
整理解雇を実行したことで、対象者以外の従業員も大挙して去り、同業の別会社を立ち上げてしまうことや、会社にとって重要なキーパーソンが退職してしまうことなどは、却って会社の経営困難の度合いを深刻化させてしまいます。
そうならないように、整理解雇にはくれぐれも慎重な判断と対応が求められます。
ただし、民事再生と会社更生の場合においては、人員整理の必要性は認められやすくなります。その上、従業員としても会社に見切りをつけて希望退職に応じやすくなるので、人員整理は進めやすくなる可能性があります。
企業再生実行の前に行うべきこと
企業再生という取り組み自体は、経営再建の専門家に依頼するのがベストな選択であるというのは間違いないでしょう。
とはいえ、その前に自社で行うべきことがあります。自社の経営状況を客観的に分析し、現状を把握することから始めましょう。
経営者自身は誰よりも自社のことを良く理解しているはずです。経営課題の把握と解決をするために必要なものを見極めたうえで、速やかに企業再生の道に入るために、先んじて以下のことを行いましょう。
● 資金繰りを把握する
● キャッシュフローを改善する
● 収益構造を見直す
● 事業再生補助金・助成金の申請
個別に詳しく見ていきましょう。
資金繰りを把握する
企業経営者にとってもっとも頭を悩ませることは、日々の資金繰りでしょう。資金ショートを起こせば、たちまち事業が立ち行かなくなります。倒産は遠いところにあるのではなく、経営と隣り合わせにあるものです。
一方、資金繰りが継続できれば、赤字経営であっても事業は継続できます。中小企業事業者向けの経営計画策定に役立つ資料として、日本政策金融公庫では資金繰り表の作成方法やフォーマットを共有しているので、参考にしましょう。
キャッシュフローを改善する
キャッシュフローを把握し改善するためには財務諸表の一種である、キャッシュフロー計算書を用いるのが近道です。キャッシュフロー計算書とは、事業活動を大きく営業活動、投資活動、財務活動の3つの要素に分解し資金の流れを捉える計算書です。
年次別、四半期別や月次別にキャッシュフロー計算書を作成することで自社の財務状況を把握することができます。つまり過去の経営活動のキャッシュフローを把握できるので、さまざまなケースの予測を立てることに役立ちます。
これにより将来期間において資金ショートを起こさないよう、改善策を打つことが可能となります。このようにキャッシュフローを把握し改善することは事業を運営するうえで不可欠といえるでしょう。
収益構造を見直す
リストラというと人員削減や人件費圧縮のイメージが強いですが、それは正しい認識ではありません。リストラはリストラクチャリングの略語ですが、それは「再構築」を意味します。〈strong〉つまり経営構造の再構築〈/strong〉がリストラの本来意味するところです。
その基本原理は売上アップとコストカットの両方を実行することで、これらができれば確実に利益が上がります。
具体的にはさまざまな経費の見直しや営業効率の改善、不採算部門の縮小・撤退、支店や営業所の統廃合による効率化などを実施することが基本です。そして、高収益が見込める分野や成長分野に経営リソースを集中することで収益構造を立て直します。
まずは全社的にコストカットを実践してみましょう。人件費は簡単にはカットできませんが、それ以外の項目では重複やロスをなくすことで全社的なコスト負担が相当程度変わってくるものです。
事業再構築補助金の申請
近年ではコロナ禍によって、多くの企業が想定していなかった打撃を受けており、コロナ関連の補助金や助成金などの各種支援が継続的に展開されています。
経済産業省の外局である中小企業庁による事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化している中小企業を対象に開始されました。
withコロナ時代の経済に対応するために、需要や売上の回復が期待しづらい中で中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促そうという意味合いがあります。
そのため、対象企業としては事業転換や新分野展開、業種および業態転換、あるいは事業再編という大胆な事業再構築に意欲を有する中小企業が想定されています。
詳しくは以下のページでご確認ください。
事業再構築補助金
M&Aによる企業再生
M&Aというと企業を売却するなどがイメージされやすいですが、企業再生においても第三者の協力を得ながら、M&Aにより企業再生を進めることが可能です。
不採算部門を切り離すことで、経営資源を主要事業に集中させ、企業再生を図ることになります。
企業再生においては事業譲渡、会社分割、第二会社方式などが主な選択肢となります。
事業譲渡は、事業あるいは事業の一部を他社に譲渡する手法です。
基本的には個別に承継する資産・負債を決定するため、引き継いだ側は簿外債務などを引き継ぐことがないというメリットがあります。また、事業譲渡の対価は現金で支払われることになるため、事業資金にも回しやすいというメリットがあります。
会社分割は、事業あるいは事業の一部を、既存の会社か新設の会社に移転する手法です。
会社分割の場合、事業を引き継ぐことになるため、従業員と個別に転籍手続き等をする必要がありません。ただし、新設分割の場合は対価が原則株式となるため、その点は注意が必要です。
第二会社方式は事業譲渡や会社分割により、コアとなる事業を第二会社に移転させておき、旧会社の特別清算手続きをとって法人格を消滅させる手法です。
旧会社が抱えていた債務や不採算事業は旧会社に残すことで旧会社の法人格の消滅とともに整理でき、主要事業だけを残すことができるというメリットがあります。
企業再生の進め方
企業再生の進め方とひと口に言っても、まず公的再生と私的再生では大きく異なりますし、またそれぞれにおいて複数の手法があって、手法ごとに進め方が違います。ここでは細かい進め方ではなく、すべての手法に共通するおおまかな進め方の流れを解説します。
まずは経営実態の的確な把握を行います。一般的に専門家によるデューデリジェンスと呼ばれる企業調査が行われ、事業面や財務面ほかさまざまな観点から現状を調査し、経営悪化の要因を追求します。
次に、経営実態を把握した上で、経営悪化要因の除去を織り込んだ再生計画を策定します。債権者に対して再生計画の策定時点で報告がなされます。計画が債権者に承認されると、再生プロセスが実行に移されることになります。
企業再生の成功事例
企業再生の成功事例として「株式会社カネボウ化粧品」と「日本航空株式会社」の事例を紹介します。
化粧品メーカーの大手カネボウ化粧品は、莫大な債務超過を抱えた状態から企業再生に成功しました。
カネボウ化粧品は1960年代後半の多角化経営が仇となり、経営リソースが分散してしまってコア事業であった化粧品分野にリソースを投入しにくくなりました。
粉飾決算を繰り返し、2003年にはおよそ630億円の深刻な債務超過が判明し、事実上破綻します。2004年に、産業再生機構による支援がスタートしました。
収益性が高い化粧品事業と成長の可能性がある繊維事業を分離して、繊維事業を早々に投資ファンドへ売却し、化粧品事業にフォーカスする道を選びました。
そして、企業ガバナンスの修復、社内組織体制の見直し、経営陣の刷新など大幅なリストラを実施する「ターンアラウンド戦略」を実行し、企業を存続させることに成功します。
「ターンアラウンド戦略」は、企業再生手法のひとつで、企業再建のために事業内容の見直しと整理を行い、中長期的な改善を目指す手法です。
日本のみならず、世界を代表する優良な航空会社として知られていた日本航空株式会社は、1987年に完全民営化され、ホテル事業や教育事業などの多くの子会社を設立し、事業を大きく拡大しました。
しかしながら、採算性が低い大型機の導入やホテル事業の不振など、長年にわたる経営不振が影響し破綻を迎え、2010年に会社更生法が適用されました。
これにより企業再生支援機構(現:域経済活性化機構)の支援のもと、経営再建が図られました。
実に5,215億円という莫大な額の金融機関による債権放棄、株式の100%減資、支援機構からの3,500億円の公的資金投入などの大胆な再生措置が取られました。
ほかにも、不採算部門の撤退や事業規模の縮小、希望退職の複数回にわたる募集、子会社の売却や企業年金の費用削減など広範囲にわたりコストダウンが実行されます。
それらの再生措置が功を奏して、企業再生が実現しました。会長に迎えられた京セラ創業者稲盛和夫氏の、徹底した社員の意識改革も企業再生の成功を導いた大きな要素といわれています。
まとめ
企業再生には公的再生と私的再生があり、それぞれに複数の手法があるので、再生方法の選択肢は多いといえます。とはいえ、営業部門で利益が出ていることが大前提です。
また、安易に人員削減に走らず、できる限りの経費削減と営業効率の改善などで生産性の向上を図ることが最優先項目です。その上で、企業の現状に見合った再生方法を検討し、しかるべきところに相談をしましょう。
M&A DXでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関等出身の専門家が、豊富なサービスラインに基づき、最適な事業承継をサポートしております。事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。