企業再生を解説|概要や手順、成功のポイントとは

公認会計士・税理士 山田武弥

会計士・税理士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、相続・M&A大学に参画し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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会社の経営状況が悪化し、債務超過に陥った場合などには、経営者は破産という決断を視野に含まなければなりません。そのようなシチュエーションで経営者が実行することが望ましい手法として、企業再生があります。

そこでこの記事では、実際に行われて復活を遂げた企業の紹介も行いながら、企業再生に関するさまざまな情報をお伝えします。この手法を活用するために求められる条件、そして実行する際の手順も確認し、経営再建に向けた最善を尽くしましょう。

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企業再生とはどのようなものか

企業再生とはどのようなものか

はじめに、企業再生とはどのような意味をもつ手法なのかという点を解説します。再建に向けた取り組みにはいくつかの手法を使えますが、その中から企業再生を選ぶメリットはどこにあるのでしょうか。

企業再生で企業を継続する可能性が残る

倒産という道を選んだ場合は、会社に残されているわずかな資金を債権者への支払いに充てることとなりますし、最悪の場合には経営者自らが破産する可能性も否定できません。一方で企業再生を実行すれば、企業を継続して再生への道を歩むことができる可能性があります。

再生に成功すれば自己破産などの道に進むことなく済み、従業員を路頭に迷わせることもありません。現状のトレンドが長期的に継続すると倒産する可能性がある場合には、企業再生を実行しましょう。

企業再生を行うための4つの条件

企業再生を行うための4つの条件

企業再生はどの企業でも確実に実施できるものではありません。目標とするのは延命ではなくあくまでも再生ですので、復活できる見込みがある企業でなければこの選択をする意味がないのです。再建の見込みありと判断されるために必要な条件はこれからご紹介する4点になります。自社に該当するか否かをまずは判断しましょう。

再生が可能な事業状態である

事業再生においては、企業を支えられる主力事業があり、その事業力が根本的に損なわれていないかどうかが重要視されます。会社の柱となる事業が正常に稼働し、発展させられる状況になければ、経営状況を上向きにさせられる可能性はありません。主力事業を強化させる上では資金が重要ですので、その他の事業を閉じるなどの手段でコストを削減できるか否かも重要なポイントです。

債権者による協力が得られる状態である

資金繰りが極めて重要となる事業再生には、債務の支払条件の変更や、圧縮に関し債務者を納得させる力が経営者に求められます。こればかりは自分自身の努力だけでどうにかなるものではなく、債権者の理解や協力が必要不可欠です。とくに銀行などの金融機関に対しては、会社が抱えている負債が巨額なものと考えられます。この手法には、後述する法的・私的というふたつの種類がありますが、どちらの場合も債務者に納得してもらい同意を取り付けられなければ先に進めません。

資金繰りの正常化が可能である

債務の圧縮をはじめとする交渉が進んだとしても、資金繰りの正常化ができなければ再生も困難です。支出を減らし、収入を増やすことができても、その結果、収入が支出を上回るようではいずれ資金繰りが行き詰まります。

経営者に強い決意がある

精神論のようになりますが、経営者の強い意思は非常に重要な要素です。会社にとって最大のピンチといえる局面では、経営者のリーダーシップが必要不可欠になります。従業員のモチベーションを高められるよう振る舞うことも意識しましょう。

企業再生の最中は、経営者にとって難しい決断を連続的に迫られることにもなります。債権者に熱意を伝えることや、時には頭を下げて理解を求めることも重要なポイントになりますので、プライドを捨てる覚悟をもつことも必要です。

企業再生の種類は法的・私的のふたつがある

企業再生の種類は法的・私的のふたつがある

先ほども簡単にお伝えしましたが、企業再生には法的・私的というふたつの種類があります。端的にいうと、裁判所による介入を受けながら行う手続きが法的再生であり、債権者との対話をベースに再生を目指す手続きが私的再生です。それぞれにはどのような特徴とメリットが備わっているのでしょうか。

裁判所の関与のもとで行う「法的再生」

裁判所を介して行う手法が法的再生です。民事再生、会社更生といった言葉に聞き覚えがある方は多いのではないでしょうか。これらの手続きを行いながら再生を目指すことが特徴といえます。

法的再生のメリットは、多数決の原理で再生案を決定するので、反対する債権者が多い場合にも債務の整理がしやすいことです。法律に則って行われる手続きであることから、透明性の高さも特徴的です。デメリットは、企業再生手続きを開始したことが公開されることで、弁護士費用などの支払いも必要になります。

法的再生の手法

法的再生手法は主に2つです。まず最も一般的な「民事再生」は、事業活動によって得られた資金で債務を返済しつつ、スポンサーを募る等により再生を目指します。民事再生法に則った手続きとなり、資産の管理処分権を手元に残すことが可能です。

次に「会社更生」は、大企業が用いることが多い手法です。現経営陣は撤退を余儀なくされます。また、担保権が更生担保権となることも特徴のひとつであり、担保権者が債権を優先的に回収することが不可能です。

企業の話し合いで行う「私的再生」

裁判所の仲介や関与を受けず、当事者間の話し合いをベースに再生を図る手法が私的再生です。法的再生と違い、主に金融機関のみを対象として協議を進め内容が金融機関以外の取引先等の公になることは原則としてありません。そのため、取引先への風評被害を回避することができ、企業再生行うことによる信用の毀損が生じないというメリットがあります。

デメリットとなるのは、支払停止を求める際に法的効力を持たせられないことです。内容にもよりますが、金融機関の足並みが揃わず合意が取り付けられない可能性が法的再生より高いです。

私的再生の手法

私的再生の場合、最初に企業がメインバンクを筆頭とした金融債権者との協議の中で、どのような枠組みで企業再生を実施すべきか検討することが多いです。準公的機関である地域経済活性化支援機構(REVIC)や中小企業再生支援協議会等の仲裁機関を活用するパターンもあれば、会社規模や資金負担等を考慮し仲裁機関を利用しないケースもあります。

さまざまな企業再生手法がある

さまざまな企業再生手法がある

企業再生に向けたアプローチの中身はさまざまです。自らコスト削減や収益事業の拡大等の対策を実行しつつ、金融面における支援を受けたり、第三者による支援を受けたりしながら企業再生を目指すこともできます。また、状況次第では廃業という選択肢を受け入れ、傷口を塞ぐことも必要になるでしょう。各手法の詳細をこの項目でお伝えします。

金融支援による再生

債務整理を行い、抱えている負債を削減しながら再生を目指す手法です。月々の返済額を減らしながら現状の経営を維持できるため、主力事業に対する投資を増やしやすくなることがメリットになります。

この手法は、先ほどご紹介した私的整理・法的整理のいずれかを選んで取り組むことが普通です。債権者による理解と協力があって成り立つ手法であることから、債権者との関係性が悪い場合に選択することは困難な手法といわざるを得ません。

第三者からの支援による再生

金銭的な支援を第三者から受け、再生を目指す手法です。スポンサーを見つけることが近道ではありますが、それ以外にも対策はあります。たとえばM&Aによって不要な事業の売却を行ったり、事業承継を行ったりという手法が有効です。自社にとって最優先ではない事業に対しても、思わぬ価値が付く可能性は十分に残されています。

廃業

上記のいずれの方法も活用できない場合は、廃業という選択を受け入れざるを得ません。債務超過により末期状態に陥った場合は、それ以上のダメージが経営者や従業員に圧し掛からないうちに見切りをつけることも必要です。

企業再生を進める5つの手順

企業再生を進める5つの手順

企業再生により経営の改善を図れる可能性があり、なおかつその道を選ぶ覚悟が固まったら、手続き開始に向けた準備を行いましょう。具体的な手順として踏むべきステップは5つです。企業再生を成功させるためには事前段階の準備に力を入れる必要があり、実行までには半年程度をかけることになりますので、速やかに相談を行いましょう。

1.初期の検討を行う

企業再生を行うべきかどうか、あるいは成功の見通しがあるかどうかを専門家に相談して判断します。この段階では、具体的かつ機密的な情報を開示する必要はありません。あくまでも企業再生の実行を検討するフェーズです。

2.事前検討を行う

企業再生の必要性が高いと判断した場合は、ヒアリングによって詳しい情報を伝え、具体的な準備に入ります。企業に関する情報を開示し、現時点での課題と長所を明確に分析したうえで、どのような改善策を執るべきか検討を進める段階です。

3.デューデリジェンス(DD)の実施と関係者への事前対応を行う

デューデリジェンス(DD)によって、事業や不動産、財務、法務といったあらゆる分野の査定を受けるのが3つ目の段階です。これによって、より細かく企業の強みと弱みを抽出します。

そのデータをもとにして、スポンサーを得られるかどうかを探りながら、債権者をはじめとする関係者との対話を行います。なぜ企業再生が必要としているのか、どの程度の協力を求めるのかといった点を明確にする、非常に重要なフェーズです。

4.再生計画案を策定する

最も長く時間をかけることになるのが、再生計画案の策定です。再生計画案とは、企業再生の過程において何を行い、どういった結果を目的とするのかといった方針を示すための案です。経営目標やそれに向けた行動計画、数値計画などを策定します。

補強すべき対象とする事業や、反対に切り離すことを視野に入れた事業を検討しながら、その事業戦略を実施するためのスキームを検討します。ここでは、債権者との協議会を開催することや、債権者からの同意を得るための方策も検討しましょう。また、自社の経営資源では再生が不可能と判断した場合にはスポンサーを探し、出資の約束を取り付けなければなりません。

5.企業再生の実行とモニタリングを行う

再生計画の実行スケジュールの策定を行った後は、再生スキームの実行と定期的なモニタリングを行うことになります。事前に立てた数値計画のレビューをはじめ、予実管理を行ったり、行動計画がどのように進捗しているのかを逐一チェックしたりしながら、管理を行いましょう。

経営者としては、この状況を見守りながら、定期的に債権者・スポンサーへの報告も行います。進捗度合いを共有し、状況の説明を行わなければ、不信感を抱かれることにもなりかねません。関係性を維持するためには、関係者とのコミュニケーションを密に取ることも重要なのです。

企業再生を成功させるためのポイント

企業再生を成功させるためのポイント

さまざまな準備を経て企業再生を開始できても、そこで安堵することはできません。会社にとって綱渡りのような状況であることには変わらず、一歩間違って失敗を犯したら、倒産という結果がすぐそこにまで迫ってしまいます。企業再生を成功させるために最重要なポイントは以下の2点になりますので、気を引き締めてかかりましょう。

原因の把握と対策の実行

とくに重要なのは、過去に犯した過ちを繰り返さないことです。なぜ失敗に至ったのかという原因を明確にして把握した上で、それを反復しないための対策を実行しましょう。

過去の失敗を教訓として生かせなければ、関係各所の協力によって持ち直すことができたとしても、それが一時的なものになってしまいます。根本的な問題点を除外することを強く意識しましょう。

従業員のモチベートを行う

経営陣の計画をスムーズに実行し、成果をあげられるかどうかは、現場のスタッフにかかっています。経営危機という状況にあることを従業員が理解している場合が多いので、従業員のモチベートを行い、士気を高めることも大切です。

単純にやる気を引き出すだけではなく、従業員がスキルを発揮しやすい環境を整備することも意識しましょう。難しい課題を突き付けるだけでなく、身近な目標を作り、成功体験を重ねさせることもテクニックのひとつになります。

企業再生の代表的な事例

企業再生の代表的な事例

企業再生はこれまでに多くの企業が経験してきました。日本で育った人であれば誰もが知っているような大企業にも、企業再生を受け入れて再浮上を果たしたケースが見受けられます。ここからは、企業再生における代表的な事例を3例ご紹介しましょう。各企業がどのような道を辿り経営再建を果たしたのか、参考にすべき点を挙げます。

日本航空の事例

国内航空会社の日本航空(JAL)は、1970年に東証一部上場を果たした最大手企業です。旅客実績世界一などの輝かしい実績を引っ提げて1987年に民営化を果たしますが、採算の取れない大型機の導入、無謀なホテル経営への参入などが重なり、経営難に陥ります。

そして2010年1月、ついに会社更生手続きの申し立てに至りました。日本航空はこの原因について「効率性に乏しい航空機の導入」「非採算性が高い地方路線の就航」「ホテル経営など本業以外への投資の不振」などを根本的な原因として分析しています。

経営の立て直しにあたっては、合計で5,215億円という巨額の債権放棄を取り付けることに成功したほか、3,500億円の公的資金の確保も実現させました。また、株式の100%減資など大掛かりなバックアップを受けることもできています。

経営にあたっては京セラ創業者の稲森和夫氏を会長に据え、事業規模の縮小や子会社の売却などコストダウンを推し進めました。企業再生から2年後の2012年には早くも営業黒字を計上し、東証一部への再上場もはたしています。

ダイエーの事例

「主婦の店」として高度経済成長期に大発展を遂げた「ダイエー」は、低価格路線のスーパーマーケットの先駆けとして、日本全国に展開を果たしました。プライベートブランドを導入するなど革新的な試みを見せますが、バブル崩壊を機に状況が一変します。

ダイエーはバブル期において不動産購入を含めた経営の多角化を推進しましたが、土地価格の崩壊により、たちまちにして巨額の負債を抱えることになったのです。2004年には自立経営が限界を迎え、産業再生支援機構による再建が行われます。

とくに大きな経営戦略の転換としては、所有していたプロ野球球団「福岡ダイエーホークス」のソフトバンクへの身売りや、コンビニ大手「ローソン」の売却を挙げられます。ダイエーそのものにおいても、不採算店舗を大量閉店させることになりました。

約10年間に渡る必至の立て直しも実らず、2014年には上場廃止となり、大手同業他社イオンに完全子会社化される結果となっています。格安路線をより鮮明に打ち出す企業が増加したことによる逆風も大きく、再建に成功できませんでした。

KANEBOの事例

1887年創業のKANEBOは、化粧品販売を戦前から実施するなどの華々しい実績を持ち、高度経済成長期には食品、薬品といった商品の取り扱いも開始します。結果的に経営多角化が足かせとなり、好調だった化粧品販売という本業にも影を落とすことになるのです。

長年の赤字耐性が続いた結果、2003年9月に629億円という巨額の債務超過を抱えて破産、産業再生機構による支援を受けて経営の立て直しを図ります。翌年、さっそく化粧品事業に特化した株式会社カネボウ化粧品の設立を行い、企業再生を果たしました。

その2年後となる2006年には、化粧品事業を同業大手「花王」に売却し、従業員の雇用を守ることにも成功しています。経営再建に成功した理由としては、伸びていた繊維事業を投資ファンドに向けて売却したことも大きな要因です。

KANEBOでは、経営再建に伴って経営陣の刷新や組織体制の大幅な見直し、大規模なリストラも並行して行っています。この戦略は「ターンアラウンド戦略」とも呼ばれ、モデルケースのひとつとなりました。

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まとめ

まとめ

債務超過などの重大な局面に陥った企業の経営を再建し、会社や従業員を守りながら立て直しを図る手法が「企業再生」です。巨額の負債を抱えながらも再生を実現した事例は多く、いくつかの条件を満たすことで現状から抜け出すための一手を打てます。

株式会社M&A DXでは、不要な事業の売却をはじめとしたM&Aによるサポートをはじめ、さまざまな指標の分析を行うことで企業再生をバックアップします。経営に行き詰まり廃業を視野に入れているのであれば、まずはM&A DXにご相談ください。

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