国内のM&A件数・中小企業のM&A件数の推移から見るM&Aの将来性

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

この記事は約14分で読めます。

企業の後継者問題に対する解決策や事業拡大の方法として、M&Aを選択する企業が増えています。

この記事では、国内のM&A件数・中小企業のM&A件数の推移やM&Aが増加している背景を紹介します。経営戦略のひとつとしてM&Aが存在することやこの記事を読まれている方の周辺でM&Aが増えていることを認識していただければと思います。

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M&Aで変わる日本企業の将来

M&Aで変わる日本企業の将来

19年間にもわたる高度経済成長期において、日本は経済的に大きな成長を遂げました。一方、近年は高齢化に加え、人口減少による承継問題が表面化してきたことなどが一因となり、中小企業庁は「中小企業事業承継ハンドブック」を公開しています。

M&Aは、国際社会で戦う企業にとって有効な手法です。グローバル企業への変遷を期待し、海外企業とのM&Aを検討する企業も増えてきており、その傾向は今後も続くことが予想されます。

国内におけるM&A件数の推移

国内におけるM&A件数の推移

中小企業庁は、今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数が後継者未定であることから2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性を指摘しています。
ここでは、国内で増加傾向にあるM&A件数の推移について見てみましょう。

1990年代後半から急増

急成長を遂げていた日本経済は、バブル崩壊により経済成長に歯止めがかかりました。各企業は大きな成長が期待しづらくなったことで企業間の統廃合が加速します。比較的体力のあった日本企業は企業価値の維持と向上を目標としたM&Aを実施するケースが増えました。事実、1993年には397件だったM&A件数が、2006年には2,775件へと急増しています。

それに伴った法整備も行われ、特に独占禁止法改正による「持株会社の解禁」「新会社法の成立」「株式交換および株式移転制度の導入」は、M&A件数の増加に大きく寄与した可能性があります。

リーマン・ショックや東日本大震災の影響で減少

増加傾向にあったM&A件数は、2008年から2011年にかけて減少します。2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災が影響していると見られます。

日本企業が業績不振に陥った結果、国内経済が縮小しました。この時期を乗り越え、2012年以降、増加傾向に戻りました。

2019年は過去最高件数に

近年は、長期的な市場規模の縮小や人口減少による事業承継問題が大きな課題となっています。課題を抱えた状況から抜け出す手立てとして、M&Aによる事業拡大や人材確保を目指すケースが挙げられます。レコフM&Aデータベースによると2019年にはM&A件数が4,000件を超え、過去最高を記録となりました。

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海外におけるM&A件数

レコフM&Aデータベースによると2019年に日本企業が海外企業を買収したM&A件数は、4,088件中826件(全体の約2割)で、2014年以降6年連続で最高記録を更新しています。実際に海外企業を買収した事例は以下の通りです。

事例1独DZバンク子会社のDVBバンクとのM&A(三菱UFJ銀行と東銀リースが買収)
事例2英バイオベンチャーの買収(大日本住友製薬が買収)

海外企業を買収することにより、海外へ事業エリアを拡大することができます。海外へ事業展開することにより企業の競争力向上を期待することができます。しかし、M&A件数の増加とは裏腹に、買収を検討している会社に成功につながるノウハウや経験が十分に備わっていないケースが多く見られます。海外企業の買収を成功させるには言語や慣習の違いを認識したグローバル化の推進などが考えられます

中小企業におけるM&A件数の推移

中小企業におけるM&A件数の推移

後継者不足を原因とした事業承継問題を抱えている中小企業において、株式譲渡や事業譲渡などM&Aが一つの解決策として活用されるケースが増えています。また、中小企業が新規事業を開拓する際にもM&Aという手法は効果的です。ここでは、近年の中小企業におけるM&A件数の推移を紹介します。

2012年から急増

中小企業のM&A件数は2012年から2017年の間で3倍以上と大きく増加し、今もなお増加傾向にあります。その要因として、M&A仲介会社の増加や政府からの指針が挙げられます。

中小企業の経営者が悩んでいるといわれている後継者問題の解決手段として、M&Aは有効な手法のひとつといえるでしょう。

ベンチャー投資が中小企業を支える傾向

若手後継者が世代交代をきっかけに新規事業や新市場参入する「ベンチャー型事業承継」で、新しい価値を生み出すケースがあります。また、大企業がベンチャー投資を行い、社外のベンチャー企業や大学が持つ技術やアイディアを活用する「オープンイノベーション」もあります。

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M&Aが増えているのはなぜ?

M&Aが増えているのはなぜ?

国内外で大きな経済的悪影響を与える出来事が起きたときを除けば、M&A件数は増加傾向にあります。なぜM&Aを選択する会社(経営者)が増えているのでしょうか。ここでは、M&Aが増えている理由について解説します。

高齢化などによる後継者問題

経営者が高齢化すると浮き彫りになるのが後継者問題です。「安心して会社経営を任せられる人材が身近にいない」「人手不足が深刻」といった理由で悩んでいる経営者もいるでしょう。

後継者問題の解決にはM&Aが有効な手法のひとつになります。M&Aで会社や事業を譲渡できれば後継者問題が解決することができます。 また、M&Aで従業員ごと買収することにより人材不足を解消する場合があります。

将来に合わせた組織編成

現在の経営状況を把握し、将来を見据えた経営が大切になります。そこで会社の状況に応じて組織編成を検討することも経営者の大きな課題のひとつです。成長が期待できる事業を的確に判断した上で、事業計画に問題がないか見直すことが迫られています。

業績が落ち込んでいる会社の経営者は選択と集中を検討し、注力する事業を絞って経営をスリム化すれば、会社を立て直すことができるかもしれません。また選択した結果として注力しないこととなった事業についても、M&Aによってその事業を伸ばせる会社に承継すれば、譲渡した事業が拡大する可能性もあります

事業拡大のための資金調達

事業を拡大するには、経営資源の確保が求められます。業績向上・事業の成長につながるような「資本」「人手」「設備環境」が整っていないと、事業の拡大は難しいでしょう。特に、設備は導入時に多額の資金が必要になり、またその後も維持費がかかることから、新しい設備を導入する資金の捻出が困難な場合があります。M&Aを実施することで、設備の取得や、新設備の導入のための資金調達が可能です。

グローバル化による多様性

国内企業同士以外国内外におけるM&Aが増えている点も、M&A件数増加の原因のひとつとして考えられます。日本企業が海外企業の事業や株式を買収するM&Aを「IN-OUT(インアウト)」と呼びます。さらなるマーケットを求めて海外に進出する企業が増えています。主にアジアや北米・欧州の企業の買収を検討していいます。

一方、海外企業が日本企業を買収する「OUT-IN(アウトイン)」と呼ばれるM&Aも注目を集めています。海外企業が国内企業を孫会社化する、「三角合併」が2007年5月に解禁されたことがOUT-INが増えている要因のひとつです。

M&Aのメリット

M&Aのメリット

後継者問題の解決や会社の経営状況の改善が期待できる以外にも、M&Aにはメリットが存在します。無形の資産である歴史や地域からの信頼を引き継げるのもメリットのひとつです。また、新規事業をスタートする際に懸念されるリスクも下げられます。ここでは、M&Aのメリットについて紹介します。

歴史や人材を引き継げる

会社の歴史や人材を引き継げるのが、M&Aのメリットのひとつです。会社の経営に大きく関わる地域からの信頼をすぐに築き上げるのは困難ですが、長い歴史や地域から信頼されている従業員を承継することで引き続き地域からの信頼を受けることができ解決できるでしょう。

また、新しいエリアで事業をスタートする場合、その地域の市場や環境についてリサーチする必要があります。すでに地域に根付いている会社をM&Aにより買収することにより、リサーチのコスト削減が見込めます。

新規事業のリスク軽減

新規事業を立ち上げる際の大きなリスクを背負うことなく安全にスタートするためには、すでに事業を行っている会社の買収も有効な手法のひとつとして挙げられます。新規事業が軌道に乗るまでの時間を最小限に抑えることができます。

ただし、条件に合う買収先を見つけるのは難しい可能性があります。スムーズなM&Aの成立には、直接相手先を探すのではなく、M&Aの仲介サービスを提供する業者に依頼するのがおすすめです。

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M&Aの金額推移は?

M&Aの金額推移は?

M&A件数は年々増加傾向にある一方、金額推移は減少傾向にあります。実施されるM&Aの1件当たりの規模が大きく関係しています。ここでは、M&Aの金額推移と現状について確認しましょう。

件数増加に対し金額は減少

2019年のM&A件数は過去最高でしたが、M&Aで動いた買収価格の合計は大幅に減少しました。レコフM&Aデータベースによると2018年が29兆8,802億円のところ、2019年は18兆295億円と38.9%も減少しています。金額が減少している要因にはM&Aの金額規模が関係していると考えてよいでしょう。

近年、小規模企業や個人企業を対象とした取引が増加しています。増加しているM&Aの取引は小規模なものとなり取引金額は1億円以下になるケースが多くあります。そのため1件当たりの金額が中堅企業や大企業の取引金額と比べ少額となり件数が多くとも金額が伴わなかったと推察できます。

マーケットごとに見る金額の推移

2019年のM&Aに関するデータをマーケットごとに見てみましょう。

 件数金額
国内企業による海外企業のM&A
(IN-OUT)
826件(6.3%増)10兆3,763億円(43.5%減)
国内企業同士のM&A
(IN-IN)
3,000件(6.6%増)6兆1,233億円(9.2%増)
海外企業による国内企業のM&A
(OUT-IN)
262件(1.2%増)1兆5,298億円(81%減)

※()内は前年比

出所:レコフM&Aデータベース

IN-OUTは金額が大幅に下がったものの、レコフM&Aデータベースをもとに集計した買収額を見ると上位20件のうち13件を占めています。買収額が1兆円を超えるM&Aもあり、大型買収が占める割合が高いといえます。

成約実績が伸びる「M&A DX」なら中小企業も安心!

現在直面している事業拡大や人手不足といった問題を解決したいなら、M&A DXへご相談ください。M&A件数の増加に比例して同社の実績も伸びていることから、経営状況にお困りの方の力になれるでしょう。多種多様な事例を担当した実績もあり、中小企業も安心できるマッチングを提供できます。

業界毎のM&A事情

各業界のM&A事情は多様であり、さまざまな要因によって影響を受けています。

製造業界では、人手不足、設備投資ができない、市場の競争が激しくグローバル化による課題への対応、技術の獲得や生産能力の拡大などを目的としてM&Aが増えてきています。

建設業界では、人材獲得を目的としたM&A、市場の拡大や競争力の向上などを目的にさまざまなM&Aが行われています。また、新たな技術や環境への対応など、多様な課題に対応するよう他業種との連携や提携も増えています。これらのM&Aは、建設企業の競争力向上や市場の変化への対応を目指す戦略の一環として重要な役割を果たしています。

運送業では、EC市場の伸びに伴い需要が高まっており、運送・物流業界の規模の拡大も期待されていますが、人手不足や市場の競争が激しく事業運営が厳しい企業が増えているのが事実です。人手不足のまま仕事が増えたことから、ドライバー不足が深刻化しています。さらに2024年問題のドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念され、物流・運送業界の売上減少、トラックドライバーの収入の減少なども考えられる理由から、運送・物流業界ではM&Aが活発化しています。

上記は飽くまでも一例ですが、業界ごとに時代に応じたトレンドがあり目的に応じたM&Aが活発に行われています。

まとめ

まとめ

M&A件数の推移は増加傾向です。2019年には過去最高を記録し、最近では小規模M&Aが増えています。後継者問題や人手不足に悩む中小企業によるM&Aは今後も増えると報道等で耳にします。また、「新規事業をスタートしたい」「会社を再建したい」といった希望を叶えるためにもM&Aは有効です。

M&A DXには実績豊富なスタッフが多数在籍しています。ワンストップでサービスを提供できることから、スムーズな提案が可能です。M&Aのサポートをご希望の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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