さまざまな業界で人手不足が起こる原因は?
人材が不足する原因は一つとは限らず、複数の要因が絡み合う場合があります。
ここでは、さまざまな業界において人材不足の原因と考えられる「少子化による労働人口の減少」「競争激化による人件費の削減」「働き方の多様化」について紹介します。
少子化による労働人口の減少
少子化が進む日本の人口は減少傾向にあります。2019年には出生数が初めて90万人を下回りました。出生数が減ることで、日本人の労働人口が減ります。減少していく労働者を企業が取り合うことになるため、採用力の低い企業は一層採用に苦心すると考えられます。
一方で、外国人労働者を採用することで人材を補う動きも見られます。
競争激化による人件費の削減
企業の競争が激化に伴う一方で、単純タスクの自動化(RPA)や物流における無人搬送・自動追従(AGV)などの製品が市場に出回るようになりました。これまで人間が実施してきたタスクをロボットがカバーするようになり、一部の人件費は削られる傾向があります。ロボットに置き換わったタスクをしていた人材は、別の仕事に従事するように調整するケースがほとんどですが、従業員によっては仕事が無くなったと感じ、モチベーションが低下し、離職につながる場合があります。
働き方の多様化
労働人口が減少する日本において、企業の競争力を担保するには、労働者一人ひとりに生産性が求められます。
近年は、仕事をしやすい環境を求めて、在宅勤務やフリーランスなど、これまでとは違った働き方を選ぶ人もいます。新しい働き方を受け入れられない組織は、採用時に苦戦を強いられるでしょう。
人手不足の業界
人手不足が深刻化している業界は「IT企業」「調剤薬局」「物流業界」「エネルギー業界」の4つです。これらの業界に共通することは、労働者の負担が大きいことや需要の増加に人材が追いつかないことなどが挙げられます。
ここからは、人材が不足している4業界を紹介します。
IT企業
ITの市場は年々拡大しているにもかかわらず、国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻化すると予想されています。IT人材は2030年に最大で79万人の人材不足となることが予測されています。
また、経済産業省が出しているIT人材需給に関する調査では、先端技術の一端であるAIに関連した人材については2030年で最大14.5万人の需要と供給のギャップが起き、人材不足になることが予測されています。
調剤薬局
国内の高齢化に伴い、市場の拡大が見込まれる調剤薬局業界ですが、過重労働による薬剤師の人手不足や個人が経営する薬局の後継者不足などの問題を抱えています。
薬剤師は一日で対応できる処方箋は40枚までと定めらており、より多くの処方箋を調剤するためには多くの薬剤師を雇う必要があります。また、地方の調剤薬局ではさらに店舗数が少なく、後継者が見つからずに貴重な薬局が廃業に追い込まれるケースもあります。
一方で、厚生労働省によると「 薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると、供給が需要を上回ることが見込まれている。」という研究結果も発表されています。
参考資料「薬剤師の需給調査方法(案)」
物流業界
インターネット通販やフリマアプリの利用者が急増したことにより、物流業界の需要は急激に高まっています。その一方で、ドライバー不足により、仕事はあっても働き手がいないため受注できず、収益が悪化し倒産する企業が増加しました。
物流業界では長時間労働が社会問題化したため、労働時間の規制が厳しくなったことも人手不足につながっています。
今後配達サービスの利用者が増えて物流業界の需要がさらに高まれば、人手不足も加速する可能性があります。
エネルギー業界
エネルギー業界では、全体として事業縮小が加速している傾向にあり、経営者・従業員の高齢化が進んでいたり、従業員を採用できないなど人材不足が加速しています。
また、近年、LPガス業界は、都市ガスやオール電化の需要が高まったことで市場が縮小され、エネルギー業者間で消費者の奪い合いが起きています。
人手不足による影響
人手が足りなくなると、従業員1人あたりの業務量が増え、必然的に業務負担が大きくなります。従業員1人が所定内の労働時間にこなせる業務量には限界があるため、長時間労働の常態化や業務の生産性が低下する恐れや仕事の受注数や請負数をセーブする必要が出てきます。
また、場合によっては従業員の待遇を見直さなければならず、待遇面への不満から離職が相次ぐと、人手不足の問題がさらに深刻化し、技術やノウハウの伝承が困難になる事が考えられます。
その結果、売上や業績が低下し、サービスや事業の縮小を余儀なくされてしまう可能性が出てきます。
さまざまな業界の人手不足対策
人手不足を解消する効果的な対策は、「働き方改革の実現」「業務環境の改善」「採用の見直し」「M&Aの実施」の4つです。まずは、多様な働き方の推進や業務環境の改善から始めてみましょう。効果が見込めない場合は、M&Aの検討をおすすめします。
ここでは、人手不足による廃業を防止する上で効果的な対策を紹介します。
働き方改革の実現
働き方改革とは、労働環境を大きく見直し、多様な働き方を推進して労働生産性を向上させる政策のことです。慢性的な人手不足を解消するため、国は働き方改革の推進に力を入れています。
時短勤務、フレックス制度、テレワーク、副業許可といった柔軟な働き方を取り入れることで、出産や介護などをきっかけに退職せざるを得ないケースを回避できます。女性や高齢者も働きやすい環境の実現により新たな人材の確保が可能です。
働き方改革は、国が積極的に推進していることから、将来は多くの企業で多様な働き方が浸透していくと考えられます。
業務環境の改善
休日が取れない、勤務時間が長いといった労働環境は、従業員の不満を招くだけでなく、生産性の低下や離職につながります。優秀な人材を確保できても、労働環境が悪いと離職してしまうケースは珍しくありません。
また、非効率的な業務を続けていると、従業員への負担が大きくなり、労働環境を悪化させます。ITソフトの導入や業務の外注などで業務を効率化すれば、残業や休日出勤が減少します。労働環境改善の取り組みを求人でアピールすれば、優秀な人材の確保を期待できる可能性があります。
採用の見直し
人手不足を防ぐには、採用のターゲットを見直すことも大切です。例えば、育児を終えて復職した女性や高齢者、外国人労働者などを採用することで、人材不足を解消できる場合あります。
また、採用のミスマッチによる早期退職を防ぐことも大切です。選考基準や応募者の意向などの採用の課題を可視化することをおすすめします。
M&Aの実施
以前は、親族に事業を引き継ぐ親族内承継が行われています。しかし、少子化が進む現代の日本では、ここ最近、4年連続で4万件を越える休廃業・解散件数があり、後継者不足問題が顕著になりつつあります。
外部企業が承継するM&Aなら、人材不足を解消できると同時に、後継者の育成プロセスを省略することが可能です。中小企業庁もガイドブックの配布や事業継承補助金の給付などでM&Aの活用を推進しているため、選択肢の一つとして検討してみましょう。
参考資料「廃業と事業承継の種類とその実態は?メリットとデメリットも徹底解説」
人手不足をM&Aで解消するメリット
後継者不足や人手不足で悩む企業にとって、M&Aは問題を解決できる有効な手段です。買収先から優秀で若い人材を確保できるだけでなく、新技術の獲得や経営基盤の強化など、さまざまなメリットを得られます。
ここでは、人手不足に対し、M&Aを活用するメリットを紹介します。
即戦力を確保できる
M&Aは企業を買収する戦略です。そのため、買収先の人材をそのまま受け入れることができます。同じ業界の企業に対してM&Aを行えば、経験や知識が備わっている労働者を獲得できるため、人材の育成や研修などのコストが圧縮できます。即戦力を確保できるのは、M&Aの大きなメリットです。
後継者問題を解決できる
少子化の影響で後継ぎをする子供がいない、子供が事業の引き継ぎを望まない、といった様々な理由で後継者が見つからない企業にとってM&Aは有効です。経営能力が高い人物に承継されることで後継者を育成する時間をかけずに、事業を後継させることができます。
参考資料「「後継者がいない」経営者が取ることのできる4つの選択肢とは?」
新技術を獲得できる
新技術を一から開発するとなると時間やコストがかかります。M&Aの場合、技術を持つ企業をそのまま買収することができます。競争力のある技術力やノウハウを取り込み、業界や市場での優位なポジションを獲得できるのは、大きなメリットといえます。
人手不足をM&Aで解消するときの注意点
M&Aには人手不足を解消に有効的がある一方で、M&A実施にあたっては注意する点もあります。買い手側の企業とトラブルを防ぐために、今後の企業方針などを擦り合わせておくことが大切です。
ここでは、M&Aを成功させる上で注意すべき2つのポイントを紹介します。
年齢層・スキルやノウハウ(人材)のレベル
退職が近い年齢層が多い企業をM&Aする場合、一時的な人材補給はできても、近い将来に再び人手不足に悩む可能性が出てきます。また、資格やノウハウのない人材を取得すると、育成に時間とコストがかかってしまい、即戦力として期待することは難しい場合があります。
人手不足を解消したいなら、事前に年齢層や従業員のスキル・ノウハウをを確認することをおすすめします。。
経営悪化を招く恐れがある
経営者の交代によって、既存社員や取引先との関係が悪化し、経営状態に影響する可能性があります。
M&Aを実施する前に、取引先や既存社員への通知やケアを行い、事業承継をスムーズに行える準備をすることをおすすめします。
まとめ
少子化などの影響で、さまざまな業界では人手不足が深刻化しています。人手不足による廃業を回避する方法として、M&Aが有効的です。M&Aを実施する際は専門家に相談することをおすすめします。注意点を理解した上で、M&Aを活用した人材確保を目指しましょう。
M&A DXでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士やWeb会社・広告代理店出身者等が、、豊富なサービスラインに基づき、最適な事業承継をサポートしております。事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。