会社売却を行う3つの方法
会社売却とは、会社の資産や権利、契約などの所有権を売却することです。現金などの対価を受け取る代わりに、第三者へ会社や事業を譲渡します。
会社売却を行う方法には主に3つの方法があります。
・株式譲渡
・事業譲渡
・合併
この章ではそれぞれの方法を解説します。ご覧ください。
株式譲渡をする
株式譲渡とは、株式を譲渡することにより支配権・経営権を売買する方法です。ほかのM&A手法と比較した場合、事務手続きが簡便なため、中小企業のM&Aで最も利用されています。
株式譲渡をすると、なぜ会社売却したことになるのでしょうか。株式の過半数を取得すると、その会社の経営権の掌握をすることができます。取締役・監査役の選任や役員報酬の決定など、会社の重要事項を単独で決定することができるということです。
また、株式保有率が2/3以上の場合、定款の変更や株式の併合といった根幹的な部分の変更も単独で可能です。株式の所有比率が高いほど経営上の権利は強くなり、会社売却の株式譲渡では、売り手企業は一般的に全株式を売却します。結果、買い手企業は経営上の全権力を手中に入れるのです。
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事業譲渡をする
事業譲渡とは、会社の事業を第三者へ譲渡するものです。事業譲渡の対象となる事業は有形・無形の財産や債務、事業組織、人材、のれん、取引先などを含むあらゆる資産・負債となります。
事業譲渡をした会社は会社法第21条の競業避止義務により、同じ地域で同じ事業を行うことが制限されます。
事業譲渡は契約により個別の権利、負債、資産を移転させる手続きが必要になります。そのため、会社の事業のすべてを譲渡したり、一部のみの事業を譲渡したりすることも可能です。
買い手企業は簿外債務や偶発債務といった契約の範囲外にある債務の譲渡を拒否することができます。
また、法人格を手放したくない場合、既存の事業すべてを事業譲渡で第三者へ譲ったとしても、残った法人格を利用して新しく事業を始めることが可能です。
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合併する
合併とは、複数の会社が契約によりひとつの法人格に統合する取引のことです。「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。
吸収合併では、合併する会社のうち存続する1社がほかの会社を吸収して、ほかの会社は解散して消滅し、その権利義務のすべてを存続する会社が継承します。権利義務とは、資産や負債、従業員などです。
新設合併とは、新設会社を作り、合併する両社を解散させて新設会社にすべての資産を移動する方法です。ただ、新たにスタートを切ることによる課題の多さから、新設合併を選択するケースは少ないようです。
いずれにしても、合併後は技術や人材の融合からシナジー効果が期待でき、飛躍的に商品やサービスの質が向上する可能性があります。
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会社売却の手続きを行う手順
この章では、会社売却の手続きを行う手順について解説しましょう。会社売却をする場合、基本的にはM&A仲介業者と契約することから始めます。M&A仲介業者選びは非常に重要な第一歩です。
会社売却は短くても半年、長いと数年間かかる一大プロジェクトです。そのため、はじめのステップであるM&A仲介業者選びは慎重に行う必要があります。
1. M&A仲介業者と契約する
効率的に会社売却を行うためには、M&A仲介業者選びが重要です。仲介業者を利用せずにM&Aをすることは不可能ではありません。しかし、時間的、精神的な労力が必要以上にかかります。また、M&Aが成立したとしても、後日トラブルに遭う可能性もあります。
そのため、M&Aは仲介業者と連携してすることをおすすめします。M&Aの業者としてはM&A DXの仲介サービスがおすすめです。「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」「合併」「株式交換」「経営統合」で多くの成立実績があります。
2. 計画の立案・自社の分析をする
会社売却をするには時間がかかります。短くて半年、長くて数年間かかるケースがあります。
スケジュール作成後に行うのは自社の分析です。実績や売上・損益を分析して、自社にどれくらいの価値があるのかを客観的に分析して算出します。誤った分析では、自社を過大評価もしくは過小評価してしまうことにより、会社売却が困難になります。ここでつまずかないようにしましょう。
あわせてコンプライアンスや税務上の問題点も確認しておくとよいでしょう。
3. 買い手候補を選定する
M&A仲介業者へ自社の情報を提供し、買い手候補選定の手続きを行います。買い手候補は自社と似たような業種や経営理念を掲げているところがよいとされています。そのほうが、シナジー効果の発生を期待できるからです。M&A仲介業者により買い手候補選定が終わったら、買い手候補の中から本格的に会社売却の交渉が始まります。
会社売却の交渉はトップ同士が面談を重ね、交渉を進めていきます。同時に、実務担当者が会社の資料をチェックしたりリサーチをすることにより、対象会社の理解を深めていきます。会社売却に買い手側、売り手側双方が納得したら、次のステップに進みます。
4. 基本合意契約の締結をする
経営者同士のトップ会合を行い、売り手の希望する条件に買い手候補が合意点を見出せそうな場合、買い手候補が意向表明書という書面を作成します。ここで買い手企業が基本的な条件を提案するのがセオリーです。その基本的な提案に、売り手側、買い手側の双方から合意をえることができたら「基本合意契約書」の締結を行います。
基本合意契約のなかには、独占交渉権が含まれているケースがあります。その場合、基本合意契約後にほかの会社と交渉をすることができなくなることを覚えておきましょう。
5. デューデリジェンスを実施する
基本合意契約を締結できたら、デューデリジェンス(DD)の手続きを行います。デューデリジェンスとは、事業の買い手が売り手の事業内容を調査する行為です。調査内容は多岐にわたり、財務・税務面から法務面までさまざまな専門家が調査を行います。
この調査により、今後の収益性や帳簿外の債務の有無、権利義務の整理、訴訟および紛争のリスクの有無などを徹底的に調べ上げます。デューデリジェンスとは、その会社の価格やM&A自体が妥当なのかを検討する作業なのです。
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6. 取締役会での説明・決議をする
取締役会を設置している会社の場合、会社売却をするときに取締役会の決議を得る必要があります。
会社法によって、取締役会には権限が与えられています。その権限がおよぶ事項について、取締役会で決議を行うのです。取締役会で決議できる事項は、「資産に関すること」「組織の重要な人事に関すること」「組織そのものに関わること」「責任の所在に関すること」「株・株主に関すること」「取締役に関すること」「事業そのものに関すること」などが挙げられます。
取締役会が設置されておらず、2人以上の取締役がいる場合は、取締役の過半数の承認をえる必要があります。
7. 最終契約の締結をする
デューデリジェンスの報告を受けたのち、売り手側は買い手側の最終提示する買収価格などの条件をもとにして、会社売却をするかしないかを決定します。買い手側が提示する価格に納得いかないのであれば、会社売却の話はブレイクして白紙化します。
売り手側が満足いく価格であれば、最終契約を締結して、クロージングの手続きを実行します。クロージングの手続きとは、買い手からの対価交付のことです。この手続きが完了したら、会社売却に必要な手続きはすべて終了となります。
会社を売却するタイミングは?
会社を売却するのに適切なタイミングとは、会社の価値が高くなったときが鉄則です。
自社の利益が右肩上がりであることや、現預金が多く有利子負債が多い等の、経営成績・財政状態・成長性が非常に重要な要素となります。
また、一般的に自社が属する業界や類似する事業の上場企業の株価が高いときが、会社を売却する最高のタイミングといえるでしょう。
株価とは、業績の先行指標といわれています。類似する上場企業の収益がさらに上がることを市場が期待しており、自社と同様の将来性の評価を見出すケースがあります。
会社売却の価格相場は?
会社の売却価格は、会社の規模や業種によって異なるでしょう。一般的な相場としては、小規模の会社や個人事業であれば数百万円~数千万円程度になります。中小企業ならば数億円~数十億円程度、大企業なら数十億円~数百億円程度になります。
海外などへ進出し、世界規模に展開する会社なら数兆円になるケースもあります。
会社売却の価格は、基本的に会社の企業価値を基準としています。最終的な価格は買い手と売り手の交渉次第にはなりますが、一般的に買い手は安く購入し、売り手は高く売却したいものです。その上で、その会社売却を通じて将来的にどれくらいの利益が発生するのかという点も最終的な価格に影響を与えます。
会社売却における税金
会社の売却に関する税金は、株主が個人であるか法人であるかにより異なります。例えば、個人の場合の税金であれば「株式売却益×約20%」が税金となり、株式売却益は「株式譲渡収入-株式の取得費-譲渡費用」で計算されます。
なお、「株式の取得費」は実際に取得した費用の代わりに「株式譲渡収入×5%」で計算することも認められています。「譲渡費用」は仲介手数料などが含まれますが、個人株主の場合は消費税込みの金額とすることができます。
適用される税率にも特徴があります。例えば給与所得に対する税率であれば累進課税(給与額が大きくなるほど税率も大きくなる)ですが、個人株主の株式譲渡であれば、基本的には税率約20%が適用されます。ただし、こちらは高所得者層に対する課税の調整(改正)も見込まれますのでご留意ください。
会社売却をするメリット
会社売却をするメリットは、どのような点にあるでしょうか。この章では会社売却のメリット4点を具体的に紹介します。
・現金が手に入る
・後継者問題が解決できる
・自社の事業を継続できる
・経営の効率化が行える
特に後継者問題は、中小企業では問題となっています。その解決策として会社売却があります。
現金が手に入る
会社売却をすることで、現金を獲得できます。事業の規模や利益によって、会社は高額での売却も可能です。
これが会社売却のわかりやすいメリットです。獲得した現金で新しい事業を興す手もあります。また、獲得したお金を使い事業を拡大させられるでしょう。
さらには、若くしてもしくはそれなりの年齢になって会社売却することにより、ビジネスの世界から退き、ハッピーリタイアメントとしてリタイアメント(アーリーリタイアメント)することも増えています。引退し、趣味やレジャーを楽しむのもいいでしょう。
後継者問題を解決できる
親族内承継や親族外承継が難しい場合、M&Aを利用した会社売却をすることで、後継者問題を解決することができます。後継者問題は中小企業庁が事業承継ガイドラインを策定するほど、現在大きな問題となっています。
中小企業は日本の経済の根幹といっても過言ではありません。後継者がいないばかりに黒字廃業をするケースも年間7万件を超えています。しかし、廃業をするにしてもコストがかかるため、後継者問題を解決できる会社売却はメリットといえます。
自社の事業を継続できる
会社売却をすることで買い手企業のなかで事業を継続できるだけでなく、事業が発展する可能性もあります。M&Aによる会社売却はシナジー効果が見込めるか否かも買い手企業の選定基準になります。そのため、会社売却して買い手企業に入ることで事業がより発展するケースもあります。
廃業を選択したら、自社の事業はなにも残りません。しかも廃業したことにより、役職員は職を失い、取引先にも迷惑をかけることになります。しかし、会社売却することで事業の発展継続が望めます。
経営の効率化が行える
採算のとれない事業を会社売却で会社から切り離すことで、経営の立て直しをすることができ、採算がとれる主力事業に集中できます。また、会社売却で得た資金を採算のとれる主力事業へ投入することもできます。
まとまった現金が手にはいりますので、財務面の改善を行い、将来に向けた投資をすることも会社売却をすることで可能になります。財務状態がよくなることで、低金利で銀行から借り入れをすることもできるでしょう。経営の効率化は会社売却のメリットのひとつです。
会社売却の注意点
会社売却のメリットについて、ここまで述べました。ここからは会社売却の注意点について紹介をしていきます。会社売却にも注意しなければならないことがあります。メリットと注意点を見極めて、会社売却を選択するようにしましょう。
会社売却の注意点は2点です。
・必ず成功するわけではない
・従業員の離職につながってしまう場合がある
必ず成功するわけではない
会社売却は、株式譲渡、事業譲渡、合併のどの手段を選んだとしても、必ず成功するわけではありません。買い手がなかなか見つからなかったり、買い手が見つかっても思うような金額で会社売却ができなかったりすることもあります。
会社売却は買い手側にとっても大きな取引になりますので、少しでも損をする可能性がある場合、話がブレイクして白紙化することも多々あります。
従業員の離職につながってしまう場合がある
会社売却で経営者が変わり、経営方針が大きく変わってしまった場合、従業員の離職につながる可能性があります。従業員にとっては、異なる企業文化に取り込まれてしまうわけですから、買い手側企業の雰囲気になじめずに離職する可能性も否定できません。
従業員の不安がなくすため、経営者は会社売却について従業員の理解を得られる話し合いの場を設ける必要があるでしょう。従業員の理解を得てから会社売却をしたり、会社売却後一定期間引継ぎとして関与をすれば、離職につながりにくくなります。
まとめ
会社売却には主に3つの方法があります。「株式譲渡」「事業譲渡」「合併」です。会社売却をするためにはM&Aの仲介業者に依頼をして進めるのが一般的です。会社売却を成功させるためには、優良で実力のあるM&A仲介業者と連携することが大切になります。
M&A DXの仲介サービスには大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士や税理士等が多数在籍しており、「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」「株式交換」「経営統合」の成立実績があります。「製造業」「サービス業」「物流会社」「商社」「外食チェーン」「IT企業」といった幅広い業種での実績もあります。
会社売却を考えている方は、M&Aの仲介業者である、M&A DXの仲介サービスのご利用をご検討ください。
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