相続における遺言書の種類と進め方を紹介!遺留分についても解説!

公認会計士 加藤大典

会計士 加藤大典

大手自動車メーカーに入社、生産技術部にて製造工程設計業務に携わる。 その後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、組織再編により有限責任監査法人トーマツのアドバイザリー部門に異動。 製造業の法定監査業務及びIFRS導入支援、組織再編支援、事業再生支援、内部統制構築支援、決算早期化支援、経営管理体制強化支援等の様々なプロジェクトに従事。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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遺言書は被相続人が亡くなった際に、相続人にどのように遺産を相続させるかを記した書類です。遺言書にはいくつかの種類があり、手続きの進め方も異なります。

遺言書の基本的な知識と手続きについて理解しておくと相続の際に役立つでしょう。あわせて遺言書が相続においてどのような機能を持っているのかについて、みていきましょう。

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本記事のポイント

  1. 被相続人が亡くなった際に、相続人にどのように遺産を相続させるか記す「遺言書」について知りたい方向けの記事です。
  2. 遺言書が相続においてどのような機能を持つかを丁寧に解説しています。
  3. 「相続が必要となったがその進め方が分からない」といった悩みを抱える相続人及び被相続人向けの記事にもなっています。

遺言書とは?

遺言書とは?

遺言書とは「死後の財産の処分の方法、遺言書の指示を誰に実行してほしいか、誰に未成年の子どもの世話をしてほしいかなどを明記した、法的な書類」と定義されています。満15歳以上であれば遺言の作成が可能です。

また成年被後見人が遺言書を作成するには、医師2名以上立会いのもと、判断力が正常という判断が必要となります。成年被後見人が医師の立会いなく作成したものでは効力がなく、民法の規定に従って作成しなければなりません。

遺言書における3つの種類

遺言書における3つの種類

遺言書の種類は、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類に分かれます。それぞれ作成の目的が異なり、正しい遺言書とするためには正しく理解しなければなりません。それぞれの特徴についてみていきましょう。

1.自分で紙に書く「自筆証書遺言」

「自筆証書遺言」は被相続人自らが手書きで作成する遺言書です。紙とペン、印鑑があれば作成でき、証人が不要で、手続きに費用もかからないため、遺言の中でも多く使われる手法です。

一方で、自筆できない場合は利用できない、書き方を誤ると無効になる、遺言書開封の前に家庭裁判所の検認が必要となる、滅失・偽造・変造の恐れがあるなどのデメリットもありました。
そこで、2020年7月から法務局によって自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。これによって家庭裁判所で検認が不要になったり、本人確認後に法務局が遺言書の原本と画像データを預かってくれたりといった改善がはかられました。

2.公証役場で作成する「公正証書遺言」

「公正証書遺言書」は、公証役場で公正証書として作成する遺言書です。被相続人が口頭で伝えた遺言を公証人が遺言書として作成します。

遺言書の管理は公証人によって行われるため、遺言改ざんの心配はありません。また遺言が規定に合わず、無効となる恐れもないとされています。

一方で、公証人や証人には遺言の内容が知られるため、誰にも遺言を知られたくない場合には不向きです。また、公証人への証書作成にあたり手数料が発生します。公正証書遺言は、公証役場により、遺言の有効性と管理が保障された遺言書といえるでしょう。

3.誰にも知られない「秘密証書遺言」

「秘密証書遺言」は、遺言の内容を誰にも知られたくないときに作成する遺言書です。自筆証書遺言と同様に、まず自分で遺言書を作成し、封入・封印した上で公証役場へ持参します。遺言書は、公証人と証人2名立会いのもとで本人確認を行い、公証役場で記録されます。

秘密証書遺言は、本人が作成したことを証明でき、改ざんされる心配がないというメリットがあります。一方で、遺言書の内容を確認できず不備が残る可能性がある、手続きに手間がかかる、手数料がかかる、紛失のリスクがあるなどのデメリットもあります。

このように、遺言書は作成方法や申請方法が種類によって異なります。どのような遺言書がよいか、作成前に調べておくとよいでしょう。

遺言書の種類ごとの進め方

遺言書の種類ごとの進め方

遺言書が発見された場合、相続にあたってどのように手続きを進めていくかは、ケースによって変わります。遺産分割を進めるために、遺言書の有無、どのような種類の遺言書なのかの確認をしておきましょう。遺言書ごとの手続きの進め方を、3つのパターンで紹介します。

自筆証書遺言が見つかった場合

自筆証書遺言が見つかった場合は、まず封を開けないよう注意しましょう。勝手に遺言を開封する行為は、遺言書の内容改ざんや偽造を疑われかねません。

家庭裁判所外で遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料が科せられます。まず遺言書を見つけたら、家庭裁判所による「検認」の手続きが必要です。未開封の遺言書を持参し、指定された日時に相続人立会いのもと検認が行われます。

検認によって遺言書に改ざんや偽造などがなく有効と判断されると、遺言書の内容にしたがって相続の手続きを進めます。

公正証書遺言が見つかった場合

公正証書遺言が見つかった場合は、公証役場にて遺言の内容を確認しましょう。公証役場で作成した公正証書遺言の控えが、自宅から出てきて発見されるケースがあります。控えと内容が相違していないか確認して、手続きを進めましょう。

公正証書遺言は、家庭裁判所の検認をする必要がありません。そのため、内容の確認が取れ次第、相続の手続きに移ります。公正証書遺言は公正証書として扱われるため、相続の手続きがスムーズに進みます。

遺言書が見つからなかった場合

被相続人が亡くなった際、どこを探しても遺言書が見つからない場合があります。遺言書は後ほど出てくると、相続の分割などトラブルになりかねません。

そのため、本当に遺言書が存在しないのか、注意深く探すとよいでしょう。それでも遺言書が見つからなかったときには、法定相続人の決定と相続内容の確認を行います。

相続内容にマイナスが多く、相続したくない場合は相続が発生してから3ヵ月以内に相続を放棄するかどうかを決めなければなりません。そのまま相続人として相続をする場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割を決定します。

遺言書がなかった場合は、相続人として遺産を相続するかどうか、どのように遺産を分けるのかを決めなければなりません。このように、相続の手続きの進め方は遺言書によって違います。手順を理解し、スムーズな手続きに移れる状況にしておきましょう。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは?

「遺産分割協議」とは、被相続人が遺言書を残さなかった場合に、遺産をどのように分配するかを相続人で話し合うことです。

協議した内容を記す「遺産分割協議書」は、相続人が遺産をどれぐらい相続したかが明確になる書類のため、事実確認の証書として効果が期待できます。遺産分割協議を行う必要があるケースや、そうでないケースについて紹介します。

遺産分割協議が必要となるパターン

遺産分割協議は、相続人が遺言書を残していないときで、民法で定められている法定相続割合で遺産の分割をしない場合に行います。

遺言書がなくても法定相続人の法定相続割合で相続するのであれば、民法に規定された通りであるため、相続分割協議を必要としません。それ以外の分割で相続を行うのであれば、遺産分割協議によって分割の割合を決めてから手続きに移ります。

例えば子が「自分は被相続人の介護を長年してきたため、多めに相続を得たい」と訴えた場合、法定相続とは違う割合で相続をもらえるよう遺産分割協議会を実施します。相続人全員で合意が得られれば、子であっても多くの相続を受けられるのです。

また遺言書が存在していても、規定にあったものでなければ、遺言が無効となる場合があります。遺言書の内容が「○○には遺産を多めにあげる」と曖昧な表現だったり、遺言書では相続分割ができなかったりするときも遺産分割協議が必要となります。

このように、遺言が見つからない場合、または見つかっても遺言内容では分割を行えない場合は、遺産分割協議を実施します。

遺産分割協議を必要としないパターン

遺産分割協議は、遺言書によって相続の分割について記されていてそれに従う場合や、法定相続割合で相続手続きをする場合は必要ありません。例えば、遺言書に「○○の遺産は500万と、○○市の土地を相続する」と具体的な金額や相続するもの(不動産、土地など)が記されているとします。

この場合、遺言書が有効なものであればその内容を優先して分割が行われます。そのため、全員の相続人が納得しているのであれば遺産分割協議をせず、相続手続きが行われます。

遺産分割協議書の作成が必要となる場合も

相続手続きを進める中で、遺産分割協議書が必要となる場合があります。例えば不動産相続の手続きの際、相続人が決まっていないと誰の名義にすればよいのか分かりません。

相続人が複数のときには、誰がどの遺産を相続するかを明確にしましょう。遺産分割協議で細かな遺産分割を行えば、トラブルの軽減にもつながります。

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遺言書の内容に納得できない場合の対処法

遺言書の内容に納得できない場合の対処法

被相続人が残した遺言によっては、相続内容に納得できない場合があります。その際に、トラブルにならないよう適切な対処法を知っておくとよいでしょう。ここからは、相続内容に納得できないとき、最低限の相続分を取得するための方法を紹介します。

相続人間で故人の意向を話し合う

まずは相続人同士で故人の意向を話し合うことです。遺言書に納得できないような内容が記されていた場合、「なぜこのような相続分割にしたのか」という、故人の考えを知らなければなりません。

亡くなった人の意向を知るのは、簡単なことではありません。しかし、相続人の中には事情を知っている人がいる場合もあります。

故人が遺産を分割するときの意向は、事情や相続人への想いが込められている可能性があるのです。遺言書の内容を相続人同士で話し合うと、それが見えてくる場合もあります。

遺留分が認められる範囲を確認

話し合いの結果によっては、遺留分をもらえない可能性があります。その際、遺留分侵害額請求で遺留分を主張することができます。

遺留分が認められれば、相続人として最低限の相続を得られます。ただし、遺留分によって法定相続割合がもらえるわけではないので、注意しましょう。
また遺留分侵害額請求には時効があるため、この点も注意しましょう。

遺留分の権利者となるのは、被相続人と以下のような関係の相続人です。

●配偶者
●子
●直系尊属(父母、祖父母など)

遺留分の権利者には、兄弟姉妹は含まれません。兄弟は、相続順位が低く、被相続人との関係が一番遠いためです。

他にも相続を放棄した人、相続廃除された人、相続欠格に該当する人も遺留分が認められません。このように、遺留分は認められる範囲があります。

自分が納得いかない相続分割だった際、遺留分侵害額請求が可能なのか、事前に知っておくとよいでしょう。

弁護士などの法律のプロに相談

遺留分侵害額請求は、ほかの相続人が納得しなければトラブルになりかねません。話し合いが上手く成立しないまま進めると、やがて訴訟問題につながる場合もあります。

話し合いが進まなくなったり、難航しそうであったりすれば、早めに法律のプロに相談しましょう。弁護士の介入があれば、不安な点の相談ができたり、話し合いの示談成立につながったりと、強い味方になってくれます。

自分たちでは解決できない相続の問題が起きたときには、プロに相談するとよいでしょう。

相続人の不公平を防ぐ「遺留分」について

相続人の不公平を防ぐ「遺留分」について

先ほど紹介したように、遺留分は相続人に保証される制度です。遺言書の内容に関係なく最低限の財産を獲得できることから相続人の公平さを保つための制度といえるでしょう。ここからは、遺留分について詳しく解説します。

遺留分とは?

遺留分とは、相続人が得られる一定割合の相続分のことで、遺言書に記された相続割合に関係なく獲得できます。例えば被相続人の長男に相続をすべて託すとします。

長男だけでなく次男や三男がいる場合は、長男以外の兄弟は相続がなく不利益を被る可能性もあるでしょう。このような場合に遺留分侵害額請求をして遺留分の主張をすれば、次男や三男がそれぞれ最低限の相続を受けられるのです。

遺留分の制度が認められる範囲

遺留分制度はすべての相続人に適用されるものではありません。遺留分を請求できるのは以下の範囲の人です。

●配偶者(夫、妻)
●直系卑属(子、孫)
●直系尊属(親、祖父母)

一方で、遺留分制度を利用できないのは、以下の範囲です。

●兄弟、姉妹、甥姪
●相続放棄した人
●相続が欠格
●相続廃除された人
●遺留分を放棄した人

このように相続順位が低い兄弟姉妹、甥姪には適用されません。また相続の放棄や欠格があった場合にも、適用範囲外とされています。

相続可能な遺留分の割合

遺産に占める遺留分の割合は、「総体的遺留分」を算出した上で、「個別的遺留分」を計算しましょう。2つのステップを踏んで計算することで、遺留分の計算が可能となります。

総体的遺留分とは、遺留分が適用される相続人全員に割り当てられる遺留分です。相続人によってその割合は異なります。

・直系尊属のみが相続人の場合…遺産全体の1/3

・それ以外の相続人(子、配偶者)の場合…遺産全体の1/2

総体的遺留分に、それぞれの相続人の法定相続分を乗じると、個別的遺留分が算出されます。各相続人の遺留分を個別的遺留分といいます。

●配偶者:1/4
●子:1/2÷子どもの人数÷2
●親:1/6
(遺留分の頭分けは、子どもや親の人数によって変動します)

このように割合は、法定相続割合と相続人の人数によって算出可能となっています。

遺留分に関する注意点

遺留分に関する注意点

遺留分は、相続人の平等性を保てる制度ですが、いくつかの注意点があります。遺留分に関する注意点をおさえていなかったために、遺産問題でトラブルに発展することも少なくありません。正しい理解をしておくと、スムーズな請求に移れるでしょう。ここからは、遺留分請求の注意点を紹介します。

1.遺留分は自動的に得られるものではない

先ほど紹介したように、遺留分は自動的にもらえるものではなく、請求をしなければ獲得できません。遺言によって自分の相続分が明らかに不利益な状況だと分かっていても、遺言に残された内容が優先となってしまいます。

そのため、自ら遺留分が侵害されていると主張し、遺留分侵害額請求を行うことが必要です。遺留分侵害額請求なしでは、遺留分は獲得できないと覚えておきましょう。

2.遺留分の請求には時効がある

遺留分の請求には、時効が存在します。遺留分が侵害されていると気づいてから1年以内に遺留分損害額請求を行わなければ、請求権が消滅します。

また遺留分の侵害に気付いてなかった場合にも、相続が発生して10年が経過すると同じように時効となってしまいます。このように、遺留分の請求はいつでもできるものではありません。

相続が発生した際に、自分の相続がどれぐらいの割合だったのかを確認し、早めに遺留分の請求に移ったほうがよいでしょう。

3.2019年7月以前に発生した相続には注意

遺留分侵害額請求は、2019年7月1日に施行された制度です。それ以前は、遺留分減殺請求という手続きが行われていました。

遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違いは、遺留分として相続人に渡されるものです。

●遺留分減殺請求 現物返還(相続により贈与、遺贈されたものをそのまま遺留分として渡す)
●遺留分損害額請求 遺留分相当分の金銭の支払い

このように現在の制度では遺留分は金銭として相続人に支払われます。ただしこれは2019年7月以降に発生した相続での遺留分請求です。

施行日以前に開始された相続については、旧民法に基づいて、遺留分減殺請求を行わなければなりません。遺留分も原則、現物返還になることを認識しておきましょう。

このように、遺留分請求の方法・タイミングには注意点があります。正しく理解しておけば、いざ遺留分請求を主張する際に役立つでしょう。

まとめ

まとめ

遺言書に記された内容は、相続の際に優先されて遺産分割に反映されます。しかし、遺言の内容によっては自分が不利な相続を受ける可能性もあるでしょう。

その際には遺留分の請求を視野に入れてみてください。相続人として平等に扱いを受ける制度のため、相続分割の際に有効です。

遺留分の請求は、多く相続分割をもらった相続人が非協力的になったり、抵抗されかねません。人間関係を破綻せずに請求をすすめるには、弁護士など法律のプロへの依頼、相談を検討してください。

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