レーマン方式でM&Aの仲介手数料を計算しよう!簡単早見表も紹介

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

この記事は約13分で読めます。

M&Aを実施する場合、煩雑な手続を円滑に進めていくための全般的なサポートをM&A仲介業者に依頼することができます。M&A仲介業者に依頼すると仲介手数料を支払うことになりますが、中でも成功報酬は「レーマン方式」という計算手法で算出されることが一般的です。そこで、ここではレーマン方式とはどのような計算法なのか説明し、簡単に算出できる早見表も紹介します。M&A仲介業者を選ぶポイントについても紹介していますのでぜひご覧ください。

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本記事のポイント

  1. M&Aの仲介手数料を知りたいと考えている方向けの記事です。
  2. レーマン方式の仕組みや計算式・計算方法について、早見表も紹介しつつ丁寧に解説しています。
  3. 納得できるM&A仲介業者を選ぶコツについても紹介していますので、M&Aを進める前にぜひお読みください。

M&Aにかかる手数料の種類

M&Aにかかる手数料の種類

M&Aに関する手数料は、いくつかの種類から成り立ちます。一般的な内訳について見ていきましょう。

着手金

M&A仲介業者に業務を依頼する際、その依頼時に支払う手数料です。M&Aでは対象となる企業に関わる情報を扱うため、安易に他の企業に情報を漏洩することはありません。依頼者が売手側の場合、正式にアドバイザリー契約を結んでから、企業概要書の作成や相手企業(買手候補)の正式紹介をすることになります。

また、依頼者が買手側の場合、当該買手がDDなどの詳細な検討プロセスに入る前に、その時点でM&A仲介業者が入手している売手側の情報の共有をうけ、初期的な調査・分析を行うことが一般的です。当該情報の共有を受けるタイミングで正式にアドバイザリー契約を締結します。

いずれも、アドバイザリー契約を締結するタイミングで着手金を支払うことが一般的です。

金額は凡そ50万円~500万円と案件規模や仲介業者などにより様々です。なお、M&A仲介業者によっては着手金なしで依頼を受けることもあります。着手金が発生しないこと自体はメリットのようにも見えますが、例えば仲介業者が作成した企業概要書の質が高くない場合もある等、デメリットとも思える点もありますので留意しましょう。

中間報酬

主に基本合意書の締結時に「中間報酬」が発生することがあります。M&Aの成立前のタイミングではありますが、基本合意書の締結時には買手に独占交渉権が付与されることが一般的でもあり、M&Aの全体プロセスから見ても相応の進捗と言えるフェーズまで進んでいることは間違いありません。そのフェーズまで進めたことに対する報酬と捉えても良いでしょう。なお、中間報酬はM&A成立時に支払う成功報酬の内金(概ね成功報酬の20%程度相当分)である場合が多くなっています。中間報酬はM&A成立前の支払いとなるため、事前に資金計画を立てて置きましょう。

顧問料、月額報酬

M&Aは成立まで相応の時間をかけて行う性質のものであるため、、顧問料や月額報酬等が設定されることもあるでしょう。金額は、案件規模や難易度の影響を受けることもあります。

買手はさらにDD費用

M&Aの買手には、相手企業を査定するDDのための費用も上乗せされます。調査項目が多く、また調査の深度が高いほどDD費用は高くなるでしょう。

成功報酬

M&Aが成立したときには、買手企業・売手企業の双方が成功報酬を支払います。なお、M&Aの成立後ではなく最終契約締結時点で請求されることもあるのでご注意ください。

成功報酬は、M&Aにかかる各種手数料のなかでも最も高額になります。そのため、M&Aの仲介を専門業者に依頼するときは、成功報酬がおおよそどの程度になるのか事前に把握しておくことが大切といえるでしょう。

成功報酬はレーマン方式で計算されることが一般的です。レーマン方式について詳しく見ていきましょう。

レーマン方式とはどんな計算方式?

レーマン方式とはどんな計算方式?

レーマン方式は、M&Aの成功報酬を求める際に用いられています。なんとなく複雑そうなイメージもありますが、実は単純で計算しやすい方式です。

レーマン方式では取引金額の大きさによって報酬料率(報酬が発生する割合)が変わり、取引金額が大きくなればなるほど報酬料率は小さくなります。そのため、取引金額に比例して報酬額が発生する比例報酬方式と比べると、取引金額が少ないときには割高、取引金額が大きいときは割安になると言えます。

レーマン方式の早見表

レーマン方式では、報酬料率は取引金額が5億円以下のときは5%、取引金額が5億円を超えるときは金額によって1%まで引き下げられます。
下記は取引金額を「譲渡金額」とした場合の早見表です。

譲渡金額報酬料率計算式
5億円以下5%譲渡金額×5%
5億円超10億円以下4%(譲渡金額-5億円)×4%+2,500万円
10億円超50億円以下3%(譲渡金額-10億円)×3%+4,500万円
50億円超100億円以下2%(譲渡金額-50億円)×2%+1億6,500万円
100億円超1%(譲渡金額-100億円)×1%+2億6,500万円

例えば譲渡金額が70億円だったときは、(譲渡金額-50億円)×2%+1億6,500万円=2億500万円を成功報酬として支払うことになります。

M&A仲介会社によっては調整あり

上記がスタンダードなレーマン方式の計算法ですが、M&A仲介業者によっては計算法に微調整を加えていることがあります。そのため、成功報酬額の算定にレーマン方式を用いているM&A仲介業者であっても、支払額が異なることも珍しくありません。

高額部分は割引

レーマン方式では、取引金額が高くなればなるほど成功報酬が高くなります。しかし、実際のところ、100億円の案件と120億円の案件を比較した場合、必ずしも120億円の案件をまとめるほうがより大きな労力がかかるとは限りません。

そこでM&A仲介業者によっては、高額な案件に関して独自の割引を実施していることがあります。例えば100億円を超える案件に関しては報酬料率を1%未満に設定したり、100億円以下の部分に対してもスタンダードな報酬料率より低い料率を適用したりすることもあります。

5億円以下の部分に関しては割高調整

M&A仲介業者の目線からすると、取引金額の大小によって要する工数が大きく変化するということはありません。。そのため、案件が小さければ小さいほど報酬金額に対する手間はかかりやすくなるでしょう。元々レーマン方式では少額案件ほど報酬料率が高く設定して傾斜をかけていますが、それでもまだ実際の作業量を反映していないと考えられます。

そこで、M&A仲介業者によっては5億円以下の部分に関して5%を超える報酬料率を設定するなど、割高に調整を加えていることが少なくありません。

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M&A仲介業者によって異なる取引金額の定義(報酬基準額)

M&A仲介業者によって異なる取引金額の定義(報酬基準額)

レーマン方式では取引金額に報酬料率をかけて成功報酬額を求めますが、取引金額にはいくつかのパターンがあります。取引金額をベースに報酬料率をかけて成功報酬額を算定する為、この取引金額を報酬基準額といいます。

M&A業者によって使用する報酬基準額が違います。主に次の4つのパターンがあるので、依頼するM&A仲介業者がどの方法で決めているのか事前に把握してください。

報酬基準額の決め方 1.株式の価値

4つのパターンのなかでは、報酬基準額がもっとも低く算定される方式です。株式の売却価値を報酬基準額と定めます。

報酬基準額の決め方 2.企業の価値

株式価値に借入金、M&A完了後に役員に支給する退職金を加えて報酬基準額を求める方式です。借入金が大きいと報酬基準額が想定以上に高くなります。

報酬基準額の決め方 3.移動した資産額

資産の移動に着目して報酬基準額を求める方式です。株式価値と借入金、M&A完了後に役員に支給する退職金、買掛金などの負債を加えて求めるため、4つの方式のなかではもっとも高額になります。

報酬基準額の決め方 4.オーナーの受取額

株式価値にM&A完了後に支給する役員への退職金を加えた金額を報酬基準額として定める方式です。株式価値だけで報酬基準額を求めるよりも、報酬基準額が高額になります。

レーマン方式について知っておきたいこと

レーマン方式について知っておきたいこと

レーマン方式をさらに身近に感じるために知っておきたいことをまとめましたので、ぜひチェックしてください。

レーマンの由来はリーマン?

実際のところ、レーマン方式の「レーマン」の由来は、はっきりとは分かっていません。成果分配方式につながる学説を唱えたドイツ人のレーマン博士の名前に由来しているという説もありますが、2008年、世界規模の経済危機を引き起こしたアメリカの投資銀行グループ・リーマンブラザーズの報酬体系に由来しているという説もあります。

消費税は別途発生する

通常、レーマン方式に則って算出された成功報酬額には消費税は含まれていません。実際にM&A仲介業者に成功報酬を支払うときは、算出された報酬額に消費税を上乗せする必要があります。

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同じ方式でも仲介会社によって料金は異なる

同じ方式でも仲介会社によって料金は異なる

M&A仲介業者の成功報酬はレーマン方式で算出されることが一般的ですが、譲渡金額をベースに算出される場合だけでなく、独自の報酬基準額をベースにすることもあるため、仲介業者によって成功報酬の額が大きく異なります。

さらに、報酬料率にも微調整が加えられるケースもあり、同じ報酬基準額をベースにしているM&A仲介業者であっても成功報酬額に差が出ることもあるでしょう。

また、成功報酬額以外の各手数料も忘れてはいけません。成功報酬が低めに抑えられている場合でも、着手金や中間報酬、月額報酬が高額なケースもあります。いくつかのM&A仲介業者に見積もりを依頼し、慎重に業者を選ぶようにしましょう。

しかし、料金が安ければ良いM&A仲介業者かというと、一概には断定できません。M&A仲介業者が担当する業務はマッチングや各種交渉、財務面のアドバイスなど多岐にわたりますが、それぞれのクオリティや内容は業者によって大きく異なります。

どの程度のクオリティを求めるのか、どのような業務をどのような資格や経歴を持ったスタッフが担当するのか、依頼する前にご自身で基準を設け、厳しくM&A仲介業者を吟味することが大切です。

業務内容やそれぞれのクオリティだけでなく、スタッフの姿勢にも注目してみましょう。。高品質かつ低価格のサービスを提供するM&A仲介業者であっても、業務の経過報告をあまりしなかったり、小規模案件に関しては不親切だったりするならば、依頼したいと思えるでしょうか。M&Aは数か月単位、場合によっては1年以上もかかるため、M&A仲介業者との付き合いも長くなります。気持ちよく付き合える業者を選ぶことも大切でしょう。

また、マッチングスキルも注目したいポイントです。マッチングスキルが低い場合、理想的な相手企業と出会うことは難しいでしょう。M&A仲介業者が手掛けてきた過去の案件を参照し、高いマッチングスキルを有しているか確認しておきましょう。

まとめ

まとめ

M&A仲介業者に依頼するときにはさまざまな手数料が発生しますが、そのなかでも最大の金額となるのが成功報酬です。成功報酬を算出するレーマン方式の理解を深め、事前におおよその金額を調べておきましょう。その際、算出する基準となる報酬基準額についても確認しましょう。。M&A仲介業者によっては報酬料率を微調整しているケースもあるので、これについても確認しておきましょう。

成功報酬の金額だけでなく、多面的な視点でM&A仲介業者を選ぶことが大切です。成功報酬以外の手数料やマッチングスキル、専門家による税務面や法務面の対応方法などにも注目してください。また、M&Aは数か月~1年以上かかることも珍しくないため、長期的に付き合えるM&A仲介業者を見つけていきましょう。

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。豊富な実績の下、高いマッチングスキルを発揮して理想的な相手企業の選定からDD、契約後の処理までワンストップで行っています。M&Aでお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。

関連記事はこちら「M&Aで必要な手数料の相場を解説!仲介業者の役割や選ぶポイント」
関連記事はこちら「M&Aの仲介手数料はいくら?完全成功報酬型が良いとは限らない!?」

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