2025年問題とは?
2025年問題とは、第一次ベビーブームによって生まれた世代(団塊世代)が2025年に75歳以上になり、日本全体が超高齢社会になることで起こるさまざまな問題を総称した言葉です。
中小企業が直面する2025年問題としては、事業承継が挙げられます。2017年秋に経済産業省と中小企業庁が出した試算によれば、2025年70歳以上になる中小企業の経営者は約245万社にも及ぶと想定されています。
またそのうちの約127万社が後継者不在により廃業・倒産の危機に立たされると予想されています。実際にこれらの企業が廃業となれば約650万人の雇用が失われ、約22兆円ものGDPが消失する可能性があるため、政府もさまざまな対策を講じているのが現状です。
2025年問題で廃業する中小企業の特徴
2025年問題で廃業の危険性がある企業には、業種を問わず共通する点が2つあります。この共通点を知ることは問題の解決にも繋がっていきます。では実際にどのような共通点があるのでしょうか?次にその共通点について詳しく解説します。
企業を経営されている方は、自身の会社にどの程度当てはまるかを考えながらチェックしてください。
事業の後継者が見つからない
経営者が高齢になれば、必然的に後継者となる人物を探すことになります。しかし後継者が見つからなければ会社や事業が引き継げず、当然廃業を選択せざるを得ません。
もし親族や従業員に後継者を見つけられない場合は、M&Aなどを利用し第三者へ事業承継する選択肢もあります。ただし事業承継をしたい企業に価値がなければ買収先も見つかりにくく、結果的に廃業になる場合もあるため注意が必要です。
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経営者を含めた社内の高齢化
高齢化しているのは経営者だけではありません。少子高齢化により人口が減少している今、従業員でも若い人材自体が減り、定年退職する従業員から仕事を引き継ぐ人材が確保できない中小企業もあります。
培われてきた技術が失われないようにと、定年後の再雇用を行ったとしても限界は必ずやってくるでしょう。人手が確保できず技術や経営が引き継がれなければ、結果として中小企業も廃業を選択することになります。
2025年問題が中小企業に及ぼす影響
2025年問題は日本経済への打撃はもちろん、中小企業自体のあり方について大きな影響を与えていく可能性があります。そこで次に2025年問題が中小企業にどのような影響を及ぼすのか、具体的に問題となる点について詳しく解説します。
中小企業の現状を含め、今後予想されることについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
経営者の年齢は70代に突入
1995年から2015年にかけ、高齢経営者の割合は増加しています。年齢のボリュームゾーンは40代後半から60代へと移動しており、今後数年の間にはボリュームゾーンが70代へ突入するでしょう。
もちろん現在も現役で敏腕をふるっている経営者もいますが、ボリュームゾーンで考えれば多くの経営者は引退の時がすぐそこまで迫っていると考えられます。しかし一方で後継者がいまだに決まっていない企業も数多く存在します。
2018年に東京商工会議所が調査したところによれば、既に後継者を決めている経営者は30.9%と全体のわずか3割程度。また「後継者を決めていないが、事業は継続したい」と回答している経営者は32.5%存在し、事業承継について課題を感じていることが伺えます。
黒字企業も休廃業・解散の危機
経済産業省と中小企業庁が出した試算では、休廃業・解散する企業の約5割が経常利益で黒字を出しています。つまり本来であれば問題なく事業を続けられる企業が、後継者が見つからないために休廃業や解散を迫られる事態が今後急増する可能性があるということです。
しかし後継者は人物を決定するだけで終わるものではありません。後継者の育成や株式の譲渡などさまざまな準備を要するため、継承のハードルは今後益々上がっていくでしょう。
地域や職種によっては更に深刻化する恐れも
日本全体で進む経営者の高齢化ですが、特に地方で問題が深刻化しています。60歳以上の経営者割合がもっとも高い地域である秋田県では、その割合が66%を超えています。
また、全国各地の産地で行ったアンケートでは、会社の倒産・廃業の理由に「後継者不足」と回答している割合は65.4%と、地方での後継者不足が深刻化しています。
今後最も人手を要する職種として介護業界が挙げられており、今後約37万人の不足が予想されるなど、職種による人材不足も大きな問題となっています。
出典:2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について
中小企業のタイプ別事業承継方法
では実際、中小企業はどのような方法で事業承継を行えばいいのでしょうか?中小企業で事業承継を行う場合、大きく3つのタイプに分けることができます。そこで次にその3つのタイプについて詳しく解説します。
それぞれ現在の日本での傾向なども数字として紹介していますので、事業承継を検討されている方は参考にしてください。
親族内事業承継
親族内事業承継は名前の通り、経営者の配偶者や兄弟、子どもなど親族が事業を引き継ぐ方法です。以前の日本ではこの親族内事業承継により中小企業が引き継がれていましたが、近年では減少傾向にあります。
帝国データバンクの2019年調査を見ても、34.9%が親族内事業承継で、2017年から6.7ポイント低下するなどこの割合は年々減少。また、「そもそも子どもがいない」「子どもが事業を継承する意思がない」などのケースもあるようです。
親族外事業承継
親族外事業承継は、社内の役員や従業員など血縁関係のない関係者に事業を継承する方法です。少子化などの影響もあり親族内で後継者を見つけられなくなったことから、親族外事業承継は緩やかながら増加。
帝国データバンクの2019年調査でも、内部昇格による事業承継は33.4%と2017年の31.1%から2.3ポイントの増加を見せており、今後もこの傾向が続くと予想されます。
M&Aによる事業承継(第三者承継)
M&Aによる事業承継とは、会社の株式や事業を他社に売却し会社や事業を存続させる方法です。親族や会社内で適切な後継者が見つからない場合などの選択肢として活用されています。
中小企業は基本的に非上場企業であるため、正確な数値は分からないものの、日本全体で見るとM&Aの件数は年々増加しています。
2025年問題に向けた中小企業の対策
中小企業の抱える2025年問題は早急に対応が迫られる大きな問題です。では2025年問題を抱えた中小企業は、事業承継についてどのような対策が講じられるのでしょうか?次にその方法を5つに分けて詳しく紹介します。
後継者に事業を引き継ぐなど根本的な対策から、M&Aの検討、さらには人材不足解消のための対策なども紹介していますのでぜひ参考にしてください。
後継者の選定と育成
事業承継を行うためまずは後継者の選定を行います。経験や技術、リーダーシップを持つ経営者にふさわしい人物を選定してください。また後継者が既に決定している場合は技術を学び、経験を積み、関係者との信頼関係を築いていきます。
しかしこれらは全て非常に時間のかかるものであるため、なるべく早く着手するのがおすすめです。もし後継者が見つからないという場合はM&Aも選択肢の1つとして検討しましょう。
専門家を通したM&Aによる事業承継
M&Aを検討する場合は、事業を変えず従業員や取引先への待遇が保証される売却先探しを行います。しかし売却側としても自社の経営を発展させるためにM&Aを行うため、価値のない会社を承継することはありません。
そのため中小企業や小規模事業者の場合、独自の技術や設備、ノウハウなど企業としての価値を示せなければ売却先が見つからない可能性もあります。
人材雇用の拡大
2025年問題の1つである人材不足を解消するためには、雇用をダイバーシティー化させるのがおすすめです。例えば短時間勤務を可能とすれば、子育て中の方や長時間労働が難しいシニア世代、労働時間に上限のある外国人留学生など雇用できる範囲を拡大可能です。
またシニア世代といっても、現代では70歳を過ぎても元気に活躍している方もいます。そういった方を企業の戦力として雇用すれば、人材不足解消に繋げられるでしょう。
産業ロボットなどのIT導入
人材不足を解消する方法としてはもう1つ、産業ロボットなどITの導入も効果的です。現在政府では中小企業で生産性を向上させるために機械の導入を推奨しており、業種を問わずさまざまな取り組みが行われています。
過去の事例ではITツール導入により業務効率が上がり、年間で2,000時間以上の残業を削減。人手不足解消だけでなくコスト削減も行えます。
社内改革による待遇や体制の見直し
今後人材を確保することが難しくなるため、現在いる従業員の離職率を下げることが人材の確保にも繋がります。離職率が下がれば、求人広告や採用にかける時間なども大幅に減らせるでしょう。
離職率を下げるにはまず現場の現状を分析することが大切です。従業員がどのような待遇や体制を求めているかを吸い上げ、風通しのいい職場づくりに努めましょう。
まとめ
今回は中小企業が抱える2025年問題について詳しく解説し、対策を行うための方法を紹介しました。後継者に事業を承継する場合はどうしても時間がかかってしまうため、なるべく早めに着手してください。時間がない場合や後継者が見つからない場合は、M&Aの検討もおすすめです。