エンジェル投資家とは? 起業するために相談をすべき理由と出資を受けるためのコツとは

公認会計士 牧田彰俊

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。 その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。 組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。 2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく牧田公認会計士事務所を設立し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら

この記事は約14分で読めます。

スタートアップ企業、ベンチャー企業の資金調達方法のひとつとして、エンジェル投資家による出資があります。エンジェル投資家以外にも、このような企業に投資をおこなう事業者としてベンチャーキャピタル(VC)がありますが、エンジェル投資家から受ける出資にはVCにはないメリットや特徴などがあります。
また、資金調達手段には融資(金融機関などからの借入)もありますが、出資はそれとも異なります。
そこで本記事では、エンジェル投資家から出資を受けることのメリット、デメリットを整理し、出資を受けるためのコツなどについて解説していきます。


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エンジェル投資家とは

エンジェル投資家とはどのような投資家なのか、またVCとの違いにはどのようなものがあるのかなどについて整理します。

リターンを目的として、個人的な資金で投資をするのがエンジェル投資

「エンジェル投資」とは、創業間もない企業(スタートアップ、ベンチャー)に対して、その将来性に期待し、リターンを目的として投資することです。そのような投資を個人資金でおこなう個人投資家が、一般的に「エンジェル投資家」と呼ばれます。(エンジェル投資を法人がおこなうケースもあります)。

初期段階の企業に投資(株主となる出資)をおこなう主体としては、創業者本人のほかに、創業者の家族や友人、またベンチャーキャピタルなどもあります。しかし、家族や友人のように、人的なつながりを理由とした資金出資の場合は、通常、エンジェル投資とは呼ばれません。あくまで事業成長による将来のリターンを目的とした投資が、エンジェル投資です。
また、ベンチャーキャピタルとの違いについては、次の項目で説明します。

エンジェル投資家とベンチャーキャピタルとの違い

初期段階の企業にリターン目的での投資活動をおこなう主体には、ベンチャーキャピタル(VC)もあります。
VCは投資そのものを本業としておこなっている企業やファンドです。それに対して、通常、エンジェル投資と呼ばれるのは、資金に余裕のある人が個人的におこなう投資です。
さらに細かくいえば、投資をするタイミング、金額、プロセス、など、VCとエンジェル投資は多くの面で違いがあります。

スタートアップ企業の資金調達ラウンド

スタートアップ企業における、事業の成長に応じた資金調達段階のことを「資金調達ラウンド」と呼びます。資金調達ラウンドによって、事業の状況や必要とする資金の額などが異なってくるため、ラウンドに応じて出資する投資家も変わります。

大別するとおおむね以下のように分類されています。なお、これらの区分は、法律などで定義されたものではなく、慣習的に用いられているものです。

1.エンジェル(プレシード)ラウンド
2.シードラウンド
3.シリーズA、シリーズB、シリーズC、……など(以下、どこまでシリーズが続くかは企業による)

エンジェルラウンドは、企業の設立直後(あるいは法人化前)の段階で、事業のアイデアはあるものの、プロダクトが完成しておらず、当然、売上もないような段階です。
エンジェル投資家が投資対象とするのは、主にこの時期のスタートアップです。エンジェル投資の金額は、1企業につき、数百万円から1,000万円程度、多くても2000万円程度までが一般的です。VCの投資規模から比べると少額ですが、スタートアップにとって、ステップアップするきっかけを作る大切な資金調達先としての役割を果たします。

ちなみに、シード期になるとエンジェル投資家以外にもシード投資家がこの時期の投資の役割を担い、シリーズA以降はVCなどがそれに代わっていきます。ただし、最近は一部のVCが、シード期に投資をおこなうこともあります。

投資ラウンド おもな投資家
エンジェル(プレシード) エンジェル投資家
シード エンジェル投資家、シード投資家、一部のVC
シリーズA・B・C VC、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)など

投資ラウンド以外にも、エンジェル投資家とVCには多くの違いがある

投資ラウンド以外にも、エンジェル投資家による投資とVCによるそれとは、いくつか異なる点があります。

投資ラウンド以外にも、エンジェル投資家とVCには多くの違いがある

まず、投資資金の原資が違います。エンジェル投資家が、基本的に自分の余剰資産から投資をおこなうのに対し、VCは自社の顧客である投資家から集めた資金を使って、事業として投資をおこないます。
そのため、投資を決定するプロセスも異なります。VCは顧客の資金を投資するため出資時のリスク管理やリターン率の評価などをかなり厳密に査定し、イグジット(投資出口)の設定もシビアにおこなわれます。
これに対し、エンジェル投資家は、そこまで厳密に審査や査定をおこなわないこともあります。そのような定量的な評価よりも、「事業アイデアがピンときた」「投資対象となる企業の創業者を気に入った」などの、定性的な評価により投資がおこなわれることもあります。

さらに、投資対象とのかかわり方も両者は大きく違います。VCは一般的に、収益結果に対する数値管理を厳しく実施しますが、事業内容そのものについては、あまり深く関与はしません。
一方、エンジェル投資家の多くは、自分自身が経営者として事業を成功させた経験を持ち、そのため実業界にさまざまな人脈を持っています。それらを用いて、投資先の事業に対してアドバイスして事業の成長プロセスに積極的にかかわるケースがあることも、エンジェル投資家の特徴です。


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日本の著名なエンジェル投資家10人

投資先進国である米国などと比べて、日本ではエンジェル投資が一般的ではありませんでした。
しかし近年、日本でも生じたスタートアップブームの影響もあり、少しずつエンジェル投資の裾野が広がってきました。日本を代表する著名なエンジェル投資家には、以下のような人たちがいます。

氏名 おもな経歴
青柳直樹 ・2006年~2016年グリー取締役
・メルペイ代表取締役、クラウドワークス社外取締役、メルカリ執行役員
赤坂優 ・婚活マッチングサービス「Pairs」を運営する株式会社エウレカを創業。
・売却後、エンジェル投資家として多数のスタートアップに投資を開始
有安伸宏 ・2007年コーチ・ユナイテッドを創業。2013年全株式をクックパッドへ売却
・売却後2015年にTokyo Founders Fundを設立し、エンジェル投資家として活動開始
家入一真 ・2003年株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を設立
・2011年株式会社ハイパーインターネッツ(現CAMPFIRE)を設立
・2012年BASE株式会社を設立
・2018年ベンチャーキャピタルNOWを設立
伊藤穣一 ・1995年株式会社デジタルガレージを創業
・2016年マサチューセッツ工科大学教授に就任(2019年退任)
・世界的に有名なベンチャーキャピタリストでありエンジェル投資家
川田尚吾 ・1999年にディー・エヌ・エーを共同設立
・2011年より同社顧問に就任。
・ITやTech分野のスタートアップに積極的に投資をおこなうエンジェル投資家
木村新司 ・2007年アトランティス(現Glossom)を創業
・2013年グノシー代表取締役に就任
・約40社に投資をおこなってきたエンジェル投資家
佐藤裕介 ・Google退社後に広告技術スタートアップのフリークアウト創業に
・2012年株式会社イグニス取締役就任
・2014年夏にフリークアウト、イグニス共にマザーズ上場
・2018年にheyを創業し、スタートアップへの投資を本格的に開始
佐俣アンリ ・2012年ベンチャーキャピタル「ANRI」を設立
・100社を超える企業に対して投資をおこなう
孫泰蔵 ・1998年ガンホー・オンライン・エンターテイメントを創業
・2013年 Mistletoe株式会社を設立。スタートアップへの投資を開始する

エンジェル投資を後押しするエンジェル税制

長らく停滞状態が続いている日本の産業界にとって、元気のいいスタートアップが増え、その中から時代の日本経済を担うような大企業に成長してくれる企業が数多く現れることが望まれています。そのため、国もそれを後押しする政策をいくつも打ち出していますが、その1つが「エンジェル税制」です。
エンジェル税制とは、エンジェル投資に対して設けられている税制上の優遇措置です。

具体的には、この制度を適用することにより、エンジェル投資家は、スタートアップなどに投資をした年と、その株式を売却した年の2つの時点で、以下の税制優遇措置が受けることができます。

時点 優遇措置
投資した年 【(ベンチャー企業への投資額-2,000円)をその年の総所得額から控除】 または 【ベンチャー企業への投資額の全額をその年の「他の譲渡所得益」から控除】のいずれかを選択
売却した年 売却で損失が生じた場合、その年の他の株式譲渡所得益と相殺
その年に相殺しきれなかった場合翌年以降3年に渡って損失の繰越が可能

エンジェル投資を後押しするエンジェル税制


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起業家がエンジェル投資家に相談すべき理由とそのメリット

スタートアップの起業家にとって、エンジェル投資家に相談し、その結果協力を受けられれば、大きなメリットがあります。その一方、注意すべき点もあります。
まず、起業家がエンジェル投資家に相談することのメリットは、主に以下の3つです。

メリット1.VCが出資しにくいシード期に資金を提供してもらえる
メリット2.成功した先輩事業家としてのアドバイスが受けられる
メリット3.人脈の紹介が得られることもある

メリット1.VCが出資しにくいシード期に資金を提供してもらえる

ビジネスの大枠が決まった段階のシード期は、まだ不確定要素が大きいため、VCからの出資を受けることは一般的には困難です。また、日本政策金融公庫などの公的制度を用いた融資を除いて、金融機関からの多額の融資を受けることも難しいでしょう。
しかし、自己資金で投資をおこなうエンジェル投資家からであれば、このフェーズであっても資金提供を受けることは十分に可能です。

メリット2.成功した先輩事業家としてのアドバイスが受けられる

先にも述べたように、エンジェル投資家は、自分で事業を起こしたり会社を経営したりしていた経験を持つ人がほとんどです。いわば「成功した先輩事業家」であるエンジェル投資家から、リアルな事業経験に基づくアドバイスを受けられることは、スタートアップの起業家に大いに役立つでしょう。

メリット3.人脈の紹介が得られることもある

2とも関連しますが、エンジェル投資家は、実業界に多くの人脈を持ちます。エンジェル投資家も、自分が投資した起業家には成功してもらいたいと願っているので、そういった人脈を積極的に活用して、スタートアップの起業家にはなかなか会うことができないキーパーソンに引き合わせてくれたりすることもあります。

メリット3.人脈の紹介が得られることもある

エンジェル投資家から投資を受ける際の注意点

エンジェル投資家から出資を受けようと考えるときに、注意しておかなければならない点もあります。主に次の2点です。

注意点1.思ったほどの出資額が受けられない場合がある
注意点2.経営への制限が生じる場合がある

注意点1.思ったほどの出資額が受けられない場合がある

エンジェル投資家は資産家ですが、あくまで個人投資家です。また、エンジェル期での投資は、リスクが高い投資です。そのため、事業としてファンドを組み、シード期以降に投資をするVCと比べると1案件に対する投資金額は、少額であることが一般的です。
苦労してエンジェル投資家から出資を受けられることになったとしても、思った程の出資額は受けられない場合があることは覚悟しておきましょう。

注意点2.経営への制限が生じる場合がある

メリット2で述べたように、エンジェル投資家が、出資をした企業の経営方針の策定や業務プロセスに対して積極的に関与する場合があります。このようなサポートは有難い反面、場合によっては起業家の方針と対立し、思い通りの経営ができなくなってしまうことにもなりかねません。エンジェル投資を受けることは、いわば「カネも出すけど口も出す」経営のパートナーシップを結ぶことだという点をしっかり理解しておきましょう。
なお、出資割合(取得株式の議決権割合)による株主の権利には、以下のようなものがあります。

投資家が取得した議決権の割合 できること
1% 株主総会における議案の提案
3% 会計帳簿の閲覧
34%(1/3以上) 株主総会における特別決議の単独阻止
50% 株主総会における普通決議の単独阻止
51%(1/2超) 株主総会における普通決議の単独決行
67%(2/3超) 株主総会における特別決議の単独決行

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エンジェル投資家ら出資をしてもらいやすくするコツ

これをやれば、必ずエンジェル投資家から出資を受けられるという決まりはありません。しかし、その可能性を少しでも高めるようなコツはあります。
以下の4つのポイントは押さえておきましょう。

1.魅力的なビジネスモデルであること
2.事業の価値が明確であること
3.やるべきことが整理されていること
4.ビジョンを十分に伝えられること

1.魅力的なビジネスモデルであること

エンジェル投資はリターンを目的に実施されます。したがって、大きく成長する可能性が感じられる魅力的なビジネスモデルでなければ、投資の対象にはなりません。
実現したいことを明確にしておくだけでなく、実現した場合市場に対してどれくらいのインパクトを生じさせることができるのかまで伝えられるようにしておきましょう。

2.事業が生み出す価値が明確であること

その事業が、いったい何のためにおこなわれるのかを明確にしておきましょう。つまり、事業が社会に対してどのような価値を提供し、最終的に社会にどのような良い影響を与えるのかを明確にしておかなければなりません。
これはなにも難しいことではなく、飲食店業を例にするなら、「今までよりも安く、手軽に、健康的なものが食べられる」というようなことです。

3.やるべきことが整理されていること

アイデアや理念だけでなく、それを実現するための事業計画書も作成しておく必要があります。何をどれくらいやれば良いのかがある程度整理されていれば、投資家がイメージしやすくなります。まだ事業がスタートしていないエンジェルラウンドでは、それほど綿密な計画書が求められることは少ないですが、ある程度以上の具体性を持った内容で作り上げていくことが大切です。
同時に、実績のある人材を揃えるなどして、投資家として出資するに値すると判断される必要があります。

4.ビジョンを十分に伝えられること

どんなに素晴らしい理念やビジネスモデルを持っていたとしても、エンジェル投資家に伝わらなければ出資を受けることは難しいでしょう。ある程度のプレゼンテーション能力や文章力などの表現力も磨き、ビジョンを伝えられるようにしておくことも必要です。

関連記事「ベンチャー企業は資金調達が不可欠!その方法や注意点などを知ろう!

まとめ

スタートアップやベンチャーは先行投資からスタートするため、創業期の資金調達には苦労します。一般的には、融資による調達がまず念頭に浮かびますが、エンジェル投資家からの投資も選択肢として視野に入れておくとよいでしょう。
エンジェル投資家の協力が得られれば、資金のサポートだけではなく、経営アドバイスなどを受けられる可能性があることは大きな魅力です。
ただし、出資を受けるということは直接的なビジネスパートナーになるということです。そのため、相手を十分に理解した上で、出資を受けるかどうかを最終的に判断しましょう。

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