【M&A】売り手側のメリット
親族内承継をするか廃業するかといった事業承継問題に悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。M&Aを選択すれば、事業承継問題を解決できるだけでなく、事業拡大やリタイア後の生活資金についてもメリットがあります。ここでは、譲渡側(売り手側)から見たM&Aのメリットを見ていきましょう。
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事業承継問題を解決できる
M&Aを実施する際の譲渡側(売り手側)のメリットのひとつとして、事業承継問題を解決できるという点が挙げられます。少子高齢化が深刻化している日本では経営者の高齢化も進んでいるのが現状です。
「家業を継ぐ」という形の親族内承継では、後継者に家業を継ぐ意思がなかったり、経営者としても継がせるのが後継者の資質不足として不安というケースが増えています。また、中小企業では会社の借金が個人保証となっている場合が多く、後継者や役職員が経営者を継ぐことの心理的な障壁もあります。
M&Aなら後継者が不在という問題を解決できます。譲受側(買い手側)の企業と折り合いがつけば、円満な事業承継が可能です。経営状況がよくても後継者がいない場合やリタイアしたくてもできないという状況の打開策としてM&Aは有用といえるでしょう。
事業拡大ができる
事業承継をすると譲渡側(売り手側)の事業拡大につながるというのは矛盾しているように思えるかもしれませんが、M&Aでは会社や事業の全部あるいは一部を売却したり会社分割や資本提携をしたりできます。さらに、経営権を維持しながら事業承継をすることも可能です。
事業承継により大企業の傘下に入ることで、経営者として継続して関与しつつ事業拡大ができるケースもあります。中小企業の場合、市場競争に勝ち残れるほどの経営資源がないこともあるでしょう。出荷物流や販売のプロセスに課題があり、高い技術力を活かせていないケースも考えられます。
経営資源の豊富な優良企業の傘下に入れば、スケールメリットが得られるだけでなく、バリューチェーンの課題も解決できます。
主力の事業に集中できる
不採算事業を抱えていたりノンコア事業の処遇に悩んだりしている経営者の方もいるのではないでしょうか。事業をたたむということは従業員の雇用を保証できなくなることを意味するので、簡単には判断できないかもしれません。
M&Aの手法のうち「事業譲渡」では、事業単位、もしくは部分的な売却が可能です。したがって、事業自体は存続したまま、経営権の承継ができます。従業員の雇用を守りながら、不採算事業やノンコア事業を切り離すことが可能です。
悩みの種だった不採算事業が売却益を生み、主力事業に集中して業績向上が望めます。事業の売却対価を主力事業に投入して経営の立て直しが図れることも、M&Aの大きなメリットです。
経営者は多額の現金を得られる
M&Aによって会社や事業を売却すると、経営者は多額の現金が得られることもメリットです。多くのM&Aの手法では、現金で創業者利潤が得られます。
M&Aは会社が培ってきた有形資産や無形資産を、そのまま譲受側(買い手側)に売却するのが原則です。保有する資産を譲受側(買い手側)が高く評価するほど、得られる現金は多くなります。
特に中小企業の場合、経営者が非上場の株式の過半数あるいは全部を保有して、実質的に単独のオーナーとなっていることがほとんどです。株主が分散する上場企業よりも経営者の希望どおりのM&Aが成立しやすく、多額の現金が得られやすいといえます。
売却対価をリタイア後の生活資金にあてれば、ハッピーリタイアが可能です。主力事業や新規事業の運転資金に回すのもよいでしょう。
廃業コストを削減できる
M&Aではなく廃業を選択すると、さまざまなコストがかかります。たとえば、会社の設備や在庫の処分費、財務処理を依頼する際の費用です。従業員に対する補償も大きな負担になるでしょう。
負債を抱えた状態で廃業した場合、廃業にかかる費用と合わせると膨大な現預金が必要になり、廃業後の生活資金に余力がなくなるリスクがあります。経営者だった時よりも収入が減っているなかで、負債の返済に追われることにもなりかねません。
廃業は従業員や取引先といったステークホルダーのデメリットが大きいことにも注意が必要です。M&Aであれば、従業員の雇用を守りながら取引先にも大きな影響を与えない選択ができます。
【M&A】売り手側のデメリット
ここまでは、譲渡側(売り手側)から見たM&Aのメリットについて解説しました。育て上げてきた会社を売却するのは、M&Aの魅力を知らなければ抵抗があるかもしれません。どのような条件でM&Aが成立するかは、経営者の選択次第です。ここでは、譲渡側(売り手側)から見たM&Aのデメリットについて解説します。
自社の従業員から不満が出る可能性がある
M&Aは経営者にとってメリットの大きい選択になりえますが、従業員にはいくつかのデメリットが存在することに注意しましょう。M&Aが成立した結果、譲受(買い手)側の傘下に入ると従業員の労働環境が変わるケースがあります。雇用契約の再締結が必要ないM&Aの手法もありますが、経営層が入れ替わることは従業員にとっては大きなストレスです。
譲受側(買い手側)の意向も聞かなければM&Aは成立しないため、不採算事業の売却の場合には従業員の待遇が悪くなったり、リストラが行われることも考えられます。従業員が新しい企業文化に馴染めるかどうかも問題となるでしょう。
従業員から不満が出れば、モチベーションの低下を招き、退職のリスクが高まるかもしれません。従業員に対しては、適切なタイミングで十分に説明をしておくことが重要です。
取引先との関係に影響が出る可能性がある
M&Aが成立すると、取引先との関係に悪影響が出るおそれがあります。それまで譲渡側(売り手側)と取引していた企業が、担当者や契約関係が変わることで不満を感じる場合もあるでしょう。最悪、契約打ち切りになることも考えられます。
これは、従業員の退職リスクとも関わりのあるデメリットです。担当者がM&Aをきっかけとして退職した場合、築いてきた信頼関係が失われかねません。
譲受側(買い手側)にとって、従業員や取引先も譲渡側(売り手側)の企業価値を左右する重要な資産です。これらがM&Aの成立後に失われると、トラブルに発展するおそれがあります。取引先も重要なステークホルダーとして、しっかりとケアをすることが必要です。
希望通りの買い手企業が見つからない可能性がある
M&Aは譲渡側(売り手側)と譲受側(買い手側)両社のトップ面談や条件交渉を経て成立します。譲渡側(売り手側)が会社や事業を売却したいと考えても、譲受側(買い手側)の企業が見つからなければM&Aは成立しません。希望どおりの買い手企業が見つからない場合もあることに注意しましょう。
譲受側(買い手側)の企業の探索は、仲介会社やM&Aアドバイザリーと連携して進めていく必要があります。M&Aが成立するまでにはさまざまな専門的なプロセスがあり、経営者が自力で買い手企業を探索するのは簡単ではありません。
また、希望どおりの条件でM&Aを成立させるためには、企業価値を高める努力が重要です。譲受側(買い手側)の経営者が工場見学をする前にメンテナンスや設備投資を行ったり、売上が伸びるような施策を準備・実行したりということも入念に行いましょう。
【M&A】買い手側のメリット
ここまでは、譲渡側(売り手側)から見たM&Aのメリットやデメリットについて解説しました。メリットが多いM&Aですが、ステークホルダーのケアや提携先企業の探索には注意が必要です。ここでは、譲受側(買い手側)から見たM&Aのメリットについて解説します。
事業規模を拡大できる
M&Aが成立することで譲受側(買い手側)が得られる大きなメリットは、事業規模が拡大できることです。譲受側(買い手側)は譲渡側(売り手側)が契約している取引先や展開している店舗等を一気に手に入れられます。
設備や不動産のような有形資産だけでなく、ノウハウや技術といった無形資産まで承継できるので、大手企業ではスケールメリットを狙ってM&Aを選択することが多いようです。
取引網や店舗網の拡大にはコストや時間がかかり、成功率が高いとはいえません。すでに市場で一定のシェアを占めている譲渡側(売り手側)の企業や事業を買収すれば、スピーディーかつ確実な事業規模の拡大につながります。
短時間で事業成長できる
競合他社を取り込んで事業規模を拡大できることのほかに、新規事業へ参入できることも譲受側(買い手側)にとっては大きなメリットです。大手企業でもゼロから新規事業に参入するのは容易ではありません。
特に、医薬品や建築のような許認可や有資格者が必要な分野では、許認可取得や社員教育の期間も必要なので長期的な計画を立てなければなりません。しかし、時間をかければ新規参入のタイミングを逃してしまい、投入したコストが回収できないおそれもあります。
また、安定した経営のためには事業の多角化が重要ですが、ノウハウを持たない事業を始める際には参入障壁の高さが課題となるでしょう。M&Aで他業種の企業や事業を買収すれば、ローリスクで新規事業の参入や事業の多角化が可能です。これにより、譲受側(買い手側)は短期間で事業成長することが望めます。
シナジー効果を得られる
M&Aにより2つ以上の企業や事業が統合すれば、相乗効果を生み価値を創出することが可能です。これを「シナジー効果」と呼びます。たとえば、販売チャネルや関連商品が増えることで、アップセリング(アップセル)やクロスセリング(クロスセル)に結びつけるような効果です。
譲渡側(売り手側)と譲受側(買い手側)の技術やノウハウを組み合わせれば、新規サービスの創出や売り上げの向上につながります。生産拠点や営業拠点が増えることで、仕入や物流のコストを削減したり競争力を高めたりする効果も期待できるでしょう。
譲受側(買い手側)の企業はシナジー効果を前提としてM&Aを検討することがあります。どのようなシナジー効果が期待できるかで、譲受側(買い手側)から見た譲渡側(売り手側)の企業価値が変わることもあるでしょう。
自社の弱点を補強できる
M&Aの成立によって、譲受側(買い手側)の弱点が補強できることもメリットのひとつといえます。たとえば、譲渡側(売り手側)が活用できていなかった営業拠点を手に入れることで、譲受側(買い手側)にとって課題だった販売網を強化できるといったケースです。
譲渡側(売り手側)にとっては切り離したい事業でも、譲受側(買い手側)にとっては不採算事業のボトルネックを解消する効果を生むこともあるでしょう。譲渡側(売り手側)が持つ特許やブランドが、譲受側(買い手側)の商品力を強化することも考えられます。
ほかにも、人材や取引先の獲得といったさまざまな面で譲受側(買い手側)の弱点の補強が可能です。不採算事業の利益率を高めるのは一般的に困難ですが、譲渡側(売り手側)との相性によっては一気に採算性を改善できます。
節税できる
M&Aが成立すると、節税効果が生まれる場合があります。譲渡側(売り手側)の企業が「繰越欠損金」を抱えていた場合、譲受側(買い手側)の企業はそれを引き継いで、繰越欠損金による赤字で黒字を相殺できるようなスキームを検討することも出来ます。繰越欠損金の繰越期間は現時点では10年間あるので、将来にわたって課税金額を減少させる効果があります。
また、事業譲渡の場合には、のれん代を償却して経費として計上することも可能です。引き継いだ固定資産は中古資産として、法定耐用年数ではなくもっと短い耐用年数を計算できます。ほかにもM&Aに関する特殊な税制があるため、節税効果を得たいなら専門家に依頼することをおすすめします。
【M&A】買い手側のデメリット
前章では、譲受側(買い手側)から見たM&Aのメリットについて解説しました。譲受側(買い手側)にもメリットとデメリットがあり、M&Aの成立には希望条件のすり合わせが必要です。ここでは、譲受側(買い手側)から見たM&Aのデメリットについて解説します。
シナジー効果が得られない可能性がある
シナジー効果が得られることは譲受側(買い手側)のメリットであると解説しましたが、想定したシナジー効果が得られないケースもあります。
たとえば、商品のラインアップの拡充と新規顧客の獲得を想定していたものの、M&Aの成立後に思うように売上が伸びないこともあるでしょう。有用な生産拠点を獲得して生産効率が上がると見込んでいたのに、想定より生産コストが下がらずに管理コストが増加する場合も考えられます。
シナジー効果を予想するための要素は複雑です。メリットだけを見て効果を期待すると、実際に事業を統合したあとに思わぬ落とし穴があるかもしれません。従業員にも新しい事業体制に対する準備がなければ、シナジー効果を得ることは難しいでしょう。
簿外債務や偶発債務のリスクがある
譲受側(買い手側)には、譲渡側(売り手側)の簿外債務を引き継いだり、偶発債務が発生したりするリスクがあります。「簿外債務」とは貸借対照表に計上がないものの、潜在的に債務性があったり、支払義務が生じる可能性が高い債務です。未払残業代等の未払いの給与や退職給付引当金がこれにあたります。M&Aでは多くのケースでなんらかの簿外債務があると考えておきましょう。
「偶発債務」とは現在は債務ではないものの、将来的に一定の条件下で債務になるものを指します。たとえば、事業撤退後に返納義務のある補助金や取引先債務に対する債務保証といったものです。偶発債務は注記として決算書に開示されているケースもありますが、多くの中小企業の決算書では開示されていないため、事後的に発覚するケースもあります。
偶発債務が発生した場合には総資産額を超える債務になる場合があり、M&Aの成立にとって大きなリスクです。仲介会社やM&Aアドバイザリーと連携して、「デューデリジェンス(DD)」を行うことが重要といえるでしょう。
最適な売り手企業が見つからない可能性がある
買い手が見つからない譲渡側(売り手側)と同様、最適な売り手企業が見つからないことは譲受側(買い手側)にとってもデメリットです。自社に統合したい事業の理想像があっても、その事業を展開している企業がM&Aを希望するかどうかはわかりません。
提携先企業の探索は、譲渡側(売り手側)にとっても譲受側(買い手側)にとっても重視すべき点といえるでしょう。まずは企業のマッチングを図り、さまざまな調査をしながら両社の希望をすり合わせていくのが効果的な方法です。
譲受側(買い手側)にとって魅力的な売り手企業は、ほかの企業からも提携先企業としてアプローチがあるかもしれません。M&Aの円満な成立のためには、仲介会社やM&Aアドバイザリーと連携することが重要です。
【M&A】従業員のメリット・デメリット
ここまでは、譲渡側(売り手側)と譲受側(買い手側)の双方から見たM&Aのメリットとデメリットについて解説しました。M&Aでは経営者の意向を重視しがちですが、従業員がどのような影響を受けるかを検討することも重要です。ここでは、M&Aが成立することによる従業員のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
M&Aの成立による従業員のメリットをいくつかご紹介しましょう。事業を統合した以上は、新しい企業文化に馴染む必要があります。相性のよい提携先企業であれば、社内のムードがよくなり、従業員の競争心を刺激する効果が生まれます。
ポジションや給与といった待遇面も、業績のよい提携先企業とのM&Aであれば改善される可能性があります。特に、企業価値の見積りでキーパーソンとなるような人材であれば、両社ともに厚遇するでしょう。
事業規模が拡大し、事業部門が増えることで、社内・グループ内人事異動の流動性が高まる場合もあります。それまでスキルや経験を活かせなかった人材が、能力を発揮したりキャリアを広げたりする機会が生まれるのも大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
M&Aが従業員にとって好条件で成立する場合もあれば、負担やストレスが大きくなるケースもあります。M&Aが成立すると企業文化の統合や事業体制の変化が起こるため、多くの場合、従業員にとっては大きなストレスになります。事業再編・組織再編の内容によっては、短期間で馴染むのが難しい場合もあるでしょう。
また、社内ルールやシステムを統一することで、業務が煩雑になって従業員の負担が増えることも考えられます。提携先企業によっては、給与水準や福利厚生の内容が変わるかもしれませんし、再生案件等ではリストラクチャリングを行わなければならないケースもあるでしょう。待遇面が変わらなくても、厚遇を受けている企業側と比べて不公平感が生まれることもありえます。
【M&A】顧客のメリット・デメリット
前章では、従業員から見たM&Aのメリットとデメリットについて解説しました。経営者は従業員が受けるM&Aの影響も考慮することが重要です。さらに、M&Aの成立が顧客にとってどのように影響するかも検討する必要があるでしょう。ここでは、顧客から見たM&Aのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
M&Aによって企業や事業を統合すると、顧客にもメリットが生まれるケースがあります。たとえば、商品のラインアップが増えることで選択の幅が広がります。また、生産ラインを統一したり仕入先を最適化したりすることでコストが削減でき、商品価格が安くなるかもしれません。
商品のブランドを維持したまま価格が下がれば、顧客がより購入しやすい状況が生まれるでしょう。商品の組み合わせによってはバンドル販売に活かせる効果もあり、関連商品の購入を一本化しやすくなります。
また、M&Aによって販売網が強化できれば、ほしかったブランドの商品を直接手にできる顧客が増えることもメリットといえるでしょう。
デメリット
M&Aでは、譲渡側(売り手側)と譲受側(買い手側)が競合しているというケースがあります。競合他社と統合すればスケールメリットやバリューチェーンに恩恵をもたらしますが、顧客にとってはデメリットになるかもしれません。
譲渡側(売り手側)と譲受側(買い手側)の企業が競合だと、顧客は取引を継続できなくなる場合があります。たとえば、事業再編により譲渡側(売り手側)の取扱商品を減らした場合、顧客はその商品を購入できなくなります。
また、商品の機能や性能は同じでも、ブランド名や店舗名をM&A成立後に刷新するというケースがあります。その場合、信頼関係を築いてきた顧客が違和感を覚えたり裏切り行為と感じたりして、リピートするのをやめることにつながるおそれがあるため注意が必要です。
地域社会に影響をもたらすM&A
譲渡企業が営業を行っている地域社会影響が出る可能性があります。
メリット:後継者問題や経営課題で廃業を検討する会社がある場合、譲渡することで事業の継続や地域に貢献が可能です。また、合併することで事業の相乗効果がおき、更なる事業発展が見込めます。地域の雇用も維持されるでしょう。
デメリット:事業が廃業した場合は、地域住民がそのサービスの利用が出来なくなります。また、その地域の雇用もなくなってしまいます。
M&Aの成功・失敗事例
そもそもM&Aの成功、失敗とはどのように判断するのかについて、明確な基準はありません。M&Aを実施するほぼ全ての企業は、それぞれが様々な目的を持っています。
例えば、売手となる企業は主力事業への集中や会社を存続させて従業員の雇用維持を目的にしているケースが多いです。
一方で、買手となる企業は、事業規模の拡大や多角化を目的としM&Aを実施しています。その目的の達成を測る尺度として、売上高や販売数の目標も同時に設定し、M&Aの実施によってその目的・目標を達成できればM&Aは成功したと言えるでしょう。反対に、M&Aの実施によってその目的、目標を達成できなければ失敗と言えます。すなわち、M&Aの成約=必ずしも成功ではないということです。
では、実際にどのようなM&Aの成功・失敗事例があるのか、過去の事例を見てみましょう。
大手企業のM&A成功事例
楽天グループ
楽天グループはECモールの最大手ですが、ECだけでなくさまざまな事業領域をM&Aによって拡充させてきました。KCカードを運営する国内信販会社を買収し楽天カードへ、イーバンクを子会社化して楽天銀行へ、そして楽天生命も既存の保険会社を買収することで成長しています。
ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは通信会社として大きな成長を遂げていますが、その過程では日本テレコム、ボーダフォン、イー・アクセスなどをM&Aで取得し大きくなった背景があります。売上高1800億円の半導体企業ARMを3.3兆円の巨額で買収した話は有名です。
日本たばこ産業(JT)
JTは本業のたばこ事業を成長させるため、グローバルで同業のM&A(クロスボーダーM&A)を行っています。RJRナビスコの米国たばこ事業の買収により売上が10倍に増加、また英国ギャラハーの買収によりさらに売上が倍に成長しました。
日本電産
日本電産は、1984(昭和59)年から2018(平成30)年までの34年間で60社に対してM&Aを実施しています。年間1〜2社のM&Aを実施しており、驚くべき数値です。日本電産はM&Aを重要な成長戦略として明確に位置付けているのが特徴になります。
武田薬品工業
2018年、武田薬品工業は、アイルランドの製薬大手シャイアーとのM&Aで6.2兆円の巨額買収したことが大きなニュースになりました。シャイアーの買収により海外での存在感が向上し、売上高が世界でも上位に入る製薬企業となったのです。
三井住友海上
三井住友海上は経済成長の著しいASEAN(東南アジア諸国連合)を中心としたアジア市場に狙いを定めて、数千億規模のM&Aを行い、成長中です。現在は、ASEAN10カ国で元請事業を行っている唯一の損害保険グループになるなど、保険事業を通じて中長期的な実績を上げています。
日本郵政
日本郵政は2018年に発表した新中期計画において、以後3年間で数千億円を資本提携やM&A、ベンチャー投資に投じると発表し、日本郵政はアフラック・インコーポレーテッドおよびアフラック生命保険との資本業務提携に合意しています。
強い信頼関係を確立してきた日本郵政とアフラック生命は、今回の資本業務提携により、がん保険に関する取り組みの見直しと成長サイクルの実現を目指す目論見です。日本郵政は今後、不動産M&Aも前向きに検討していることを発表しています。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは、2014(平成26)年にジムビームを保有する米蒸留酒最大手ビーム社を1.6兆円で買収しました。当時、大型買収として話題になりましたが、海外企業とのM&Aでも特に成功した事例といわれています。
当初、サントリーは、創業200年の老舗メーカーで、伝統やこだわりが強いビームと統合がうまくいきませんでした。しかし、ローソン会長だった新浪剛史氏を社長に招き、両社が歩み寄ったことにより世界的なメーカーへと成り上がったのです。
最新のM&A事例
GMOインターネットによるOMAKASEの買収
2021年6月、GMOインターネットがOMAKASEを買収し子会社化しました。
凸版印刷によるアイオイ・システムの買収
2021年6月、凸版印刷がアイオイ・システムを買収し子会社化しました。
ベネッセホールディングスによるプロトメディカルケアの買収
2021年6月、ベネッセホールディングスがプロトメディカルケアを買収し子会社化しました。
ガイアックスによるGENIC LABの買収
2021年6月、ガイアックスがGENIC LABを買収し子会社化しました。
日本商業開発によるツノダの買収
2021年5月、日本商業開発がツノダを買収し子会社化しました。
ビジネス・ブレークスルーによるブレンディングジャパンの買収
2021年5月、ビジネス・ブレークスルーがブレンディングジャパンを買収し子会社化しました。
ダスキンによるEDISTの買収
2021年5月、ダスキンはEDISTを買収し子会社化しました。
エレコムによるフォースメディアの買収
2021年5月、エレコムがフォースメディアを買収し子会社化しました。
ジャパンエレベーターサービスホールディングスによるトヨタファシリティーサービスの買収
2021年5月、ジャパンエレベーターサービスホールディングスがトヨタファシリティーサービスを買収し子会社化しました。
タカラレーベンによるACAクリーンエナジーの買収
2021年4月、タカラレーベンがACAクリーンエナジーを買収し子会社化しました。
大手企業のM&A失敗事例
パナソニック
パナソニックでは、2009(平成21)年に三洋電機をM&Aにより約4,000億円で取得した後に、のれん代の2,500億円を減損処理したことがありました。
富士通
富士通は、英ICL社をM&Aにより1,800億円で巨額買収した後に、多額の評価損を計上しています。
セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスは、そごう・西武の株式を累計2,000億円超をかけて取得したものの、その後約600億円の評価損を計上しています。
丸紅
丸紅は、2012(平成24)年に同社過去最高額となる約2,800億円をかけて買収した米穀物メジャーのガビロンについて、2015(平成27)年には、のれん代500億円の減損処理を行っています。
M&Aのメリットを活かしたいならM&A DXの仲介サービスで!
M&Aにはさまざまな手法があります。メリットやデメリットを考えているうちに、どの手法を選べばよいかわからなくなることもあるでしょう。自社の課題解決につながるM&Aを成立させるには、成立実績の豊富な仲介会社と連携することが重要です。
M&A DXの仲介サービスは、M&Aに関するお悩みをあらゆるプロセスでサポートします。M&Aの提携先企業の探索からデューデリジェンス(DD)、クロージング支援から100日プランの実行支援までトータルな連携が可能です。
製造業、サービス業、物流会社、商社、外食チェーン、IT企業など、幅広い業種実績があります。M&A DXには大手監査法人系M&Aファーム出身者や金融機関のM&Aチーム出身者が在籍しており、信頼できるM&Aアドバイザリーを探している方にも打ってつけです。株式譲渡や事業譲渡、会社分割の仲介を検討している方もお気軽にご相談ください。
まとめ
M&Aによる事業承継を検討する経営者の方は増加傾向にあります。M&Aの魅力を知れば、親族内承継や廃業以外にも最適な方法があると気づくでしょう。
M&Aは譲渡側(売り手側)にも譲受側(買い手側)にもさまざまなメリットがあります。そのため、事業承継問題を解決したい中小企業の経営者の方や事業拡大や海外進出を狙う大手企業の経営者の方の中には、興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
M&A DXには信頼できるM&Aアドバイザリーが在籍しており、M&Aの豊富な成立実績があります。M&Aを検討しているのなら、M&A DXの仲介サービスの利用をぜひご検討ください。