遺産分割するための手続きとは!各手続きのポイントを解説

会計士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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相続する際には、通常、相続人の間で遺産分割します。スムーズに分割するためには、遺産分割するための手続きとしてどのようなものがあるのかを理解しておかなければなりません。

今回の記事では、遺産分割するための各手続きについて解説します。今後相続を予定している方はもちろん、自分の財産をどのように大切なひとに遺せるのか気になっている方もぜひ参考にしてください。

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本記事のポイント

  1. 遺産分割するための手続きにはどのようなものがあるのかを知りたい方向けの記事です。
  2. 遺産分割の各手続きを丁寧に解説しています。
  3. 各手続きの特徴を把握することができるので、相続時に自分たちはどのような方法を取るか知りたいという方向けの記事にもなっています。

遺産分割とは

遺産分割とは

遺産分割は「複数の相続人の間で遺産を分配すること」です。相続が発生すると遺産は共同相続人の共有状態となるため、各自の単独所有とするために分割手続きをおこなわなければなりません。

遺産分割割合は法定相続分が目安

遺産分割割合に法律上の決まりはありません。ただし、民法で定められた法定相続分に従うことが一般的です。

法定相続分に従うと、相続人が配偶者と子(第一順位)の場合の相続分は各2分の1となります。配偶者と直系尊属(第二順位)の場合、配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1です。

また、配偶者と兄弟姉妹(第三順位)の場合に配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1となります。子・直系尊属・兄弟姉妹が2人以上のときは、均等に分けるのが原則です。

遺産分割手続きの種類

遺産分割手続きには、「遺言書による分割」「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」があります。

遺言書があれば、遺言書の通りに分割することが原則です。遺言書がない場合、遺産分割協議で分割方法を決めます。

そして遺産分割協議で解決できない場合の手続きが遺産分割調停、それでも決まらない場合は遺産分割審判へと移行します。

なお、以下のように遺産分割をしないケースもあります。

● 相続人がひとりのみ
● 遺言書で全相続先を指定している
● 遺産分割の対象となる財産が存在しない
● 相続放棄をする

次からは各手続きの特徴やポイントを説明していきます。

遺言書による分割とは

遺言書による分割とは

遺言は「死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、一定の方式に従ってする単独の意思表示」です。被相続人は遺言書に遺言を書いておけば、自分の意思に基づいた遺産分割を実現することができます。

遺言書の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があり、それぞれ特徴が異なります。

自筆証書遺言は「遺言者本人だけで作成する遺言書」です。遺言の全文と日付を遺言者が自筆で書き、署名押印します。

公正証書遺言は「遺言者に代わって公証人が作成する遺言書」です。遺言者が2人以上の証人の立ち会いのもとで口述した遺言内容を公証人が筆記し、各自が署名押印します。

秘密証書遺言は「遺言書の内容や存在を秘密にすることができる」ものです。遺言者は署名押印した遺言書を封筒に入れて封印し、公証人に提出して証人2人以上の立ち会いのもとで氏名・住所などを申述します。

遺産分割協議との関係

遺言書があれば、遺産分割協議なしで遺産分割をすることができます。しかし、遺言による贈与(遺贈)を受ける者が遺贈を放棄すれば、遺産分割協議をしなければなりません。

なお、遺言書があっても遺留分を請求する法定相続人がいる場合、遺言書通りに財産を相続しても遺留分侵害額分を支払わなければなりません。

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遺産分割協議とは

遺産分割協議とは

遺産分割協議は「複数の相続人の間で遺産の分配割合を話し合うこと」です。相続人間の話し合いでまとまれば、法定相続分によらずに決めることができます。

遺産分割協議の方法

遺産分割協議を進めるためには、まず相続人が誰なのかを確認しなければなりません。戸籍謄本などで、相続人を確定させます。

次に、被相続人にどのような財産があるのかを調査します。預貯金残高については、各金融機関に照会することで確認可能です。

続いて、相続人間で話し合いの場を設け、全員が納得できれば遺産分割協議書に署名捺印します。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書を作成する際には、以下の点を意識するようにしてください。

●誰がどの遺産をどの割合で相続するのか
●法定相続人の人数分を作成し各自で保管
●法定相続人全員が署名し、実印を押印

遺産分割協議書は、金融機関の預金解約や不動産名義変更などにも用いられます。

遺産分割協議に時効はない

遺産分割協議や協議のやり直しには原則時効や期限はありません。ただし、相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内が期限です。

遺産分割協議を放置しておくことで、相続税の申告が期限内にできなくなるおそれもあるので、できるだけ早めの協議を心がけてください。

遺産分割協議に不服がある場合

遺産分割協議に不服がある場合

遺産分割について相続人の間の協議でまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割の調停や審判の手続を利用します。

出典:裁判所「遺産分割調停」

まずは遺産分割調停

遺産分割調停の申立先は申立者以外の相続人のうち、ひとりの住所地を管轄する家庭裁判所もしくは当事者が合意のうえで定めた家庭裁判所です。調停手続では裁判官が当事者双方から事情を聴き、資料提出を促すなどして事情把握に努めます。

その上で解決案を提示したり、解決のための助言をしたりして合意を目指します。

調停が成立しなければ審判

遺産分割調停でも話がまとまらなければ、遺産分割審判に入ります。遺産分割には話し合いの要素があるのに対し、遺産分割審判は裁判所が強制力のある「審判」を下すものです。

つまり、遺産分割審判では相続人が納得していようとしていなかろうと、裁判所の決定に従わなければなりません。審判開始から確定までには通常数ヶ月の期間がかかります。

遺産分割審判に至るまでには、遺産分割協議や遺産分割調停を経ているので、被相続人が亡くなってから数年が経過していることもあります。

まとめ

まとめ

遺産分割には「遺言書による分割」「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」といった方法があります。最初に遺言書の確認から始まり、遺産分割審判は最終手段です。

遺産分割では各相続人間の利害関係が対立し、トラブルにつながることもあります。被相続人が事業に携わっていた場合、事業用資産も相続財産の対象になるため分割はより複雑になるでしょう。

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